被災地では「食料よりも切実な課題」 「南海トラフ地震」で危惧される“トイレ問題” 専門家は「災害関連死に繋がるリスクが」
「トイレを待ち焦がれていた」
支援活動のため、能登の被災地にも赴いたという石川氏。
「地域の特性上、地震の揺れに弱い伝統的なつくりの建物が多かったため、倒壊の被害が広がってしまいました。そのため、被災地のほとんどの方が避難所に集中するという事態が発生していて、トイレ問題もより深刻になっているように思います」
そんな石川氏は、災害派遣トイレネットワークプロジェクト「みんな元気になるトイレ」の発起人である。
「このプロジェクトは、賛同してくださった各自治体にトイレトレーラーを保有していただき、どこかで災害が起こったらそのトレーラーを派遣していただくという、助け合いのシステムです。全国ですでに19の市町村が参画してくださっていて、今回も京都府亀岡市や新潟県見附市など、全国からトイレを派遣していただくことができました」
トイレが届いたときの反応から、現場でいかにトイレが求められていたか、実感させられたという。
「『やっと、ドバーッと出せて本当によかった!』と、若い女性まであっけらかんと言ってくれたんです。そんな声を聞いて、本当に待ち焦がれていたのだと実感しました」
とはいえ、支援の体制が完全に整っているとは言い難い。
「1月16日時点では、16台のトイレトレーラーを派遣することができています。ですが、それではとても十分とはいえないのが被災地の現状です。これからもっと多くの自治体さんに参画していただき、全国で助け合える体制が整えられたらと思っています」
簡易トイレの備えを
能登地震をきっかけに、首都直下型地震や南海トラフ地震のリスクにも注目が集まっている。
「当然ながら、今起こっている事態は、誰にとっても他人事ではありません。例えば都心部で大地震が起きたら、人口が多い分、トイレ問題も大きなものになります。特に東京のように人口密度の高い場所なら、その深刻さは桁違いでしょう。救助の手が行き渡るまで、最大2週間ほどかかるともいわれます」
では、これから起こりうる震災に対して、どのように備えておくべきなのか。
「防災グッズとして、水や食料の備蓄がよく挙げられますが、今の能登の被害を見ておわかりの通り、簡易トイレや携帯トイレなどの備えも、同じくらい重要といえます。1日にトイレに行く回数は5回程度といわれますから、4人家族なら、1日あたり20回分、これを2週間分用意しておくのが理想です」
そしてこう呼びかける。
「災害関連死の数は、支援のやり方や各々の備えによって大きく減らせるはず。今は能登の災害関連死を最小限にするために手を尽くしたい。それと並行して、一人ひとりがこうした知識を持っておくことの重要性も、改めて周知していきたいです」