「160キロ超え」も夢ではない! 健大高崎の剛腕「石垣元気」が夏の甲子園で見せたポテンシャルと課題

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 8月7日に開幕した夏の甲子園、大会初日の第2試合には、甲子園春夏連覇を目指す健大高崎(群馬)が登場。英明(香川)を相手に1対0でロースコアの接戦を制した。勝利の立役者は、新エースの石垣元気(2年)だ。【西尾典文/野球ライター】

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甲子園のスタンドからはどよめきが起きた

 0対0で迎えた4回。石垣は、ワンアウト満塁で、マウンドに上がった。7番の高橋一成に対して、ストレートで追い込むと、カウント3-2からファーストにゴロを打たせて、3-2-1のダブルプレー。大ピンチを乗り切った。それ以降は、スコアボードに0を並べて、5回2/3を投げて被安打0、6奪三振。英明打線を抑え込んだ。

 健大高崎は、選抜優勝投手の佐藤龍月(2年)が左肘を故障し、ベンチ入りメンバーから外れた。そんな不安をかき消すような、見事な投球内容だった。石垣は試合後、自身のピッチングについて、以下のように振り返っている。

「今日は先発ではなく、リリーフということだったので、しっかり準備して臨んだのですが、(4回のピンチを無失点で抑えて)良い入りができました。あの場面は、自分がエースとしてゼロで抑えることを意識して、マウンドに上がった。(佐藤が怪我でメンバーを外れたことについては)聞いた時はショックでしたが、(自分が)背番号1をもらって、自覚や責任感を持って投げることができました」

 石垣の“最大の魅力”は、ストレートだ。4回の満塁のピンチでは、150キロを超える速球を連発し、相手バッタ―を追い込んでいった。さらに、5回には、153キロをマークして、甲子園のスタンドからはどよめきが起こった。

高校生で史上3人目となる160キロ超えなるか

 これは、夏の甲子園で2年生投手が出した球速で、歴代2位だ。ちなみに1位は、2013年に済美・安楽智大(現・メキシコシティ・レッドデビルズ)が記録した155キロ。当時の安楽は、目いっぱい腕を振って投げていたが、石垣はそれに比べると、上手く力を抜いて、楽に投げている。それを証明するように、球数が100に迫った9回に150キロを2球も計測した。

「今春の選抜でも150キロのストレートを投げていましたけど、そこから成長していますね。少し力を入れれば、150キロが出ますし、フォームのバランスも悪くありません。無理やり“ぶん投げている”わけではなく、ちゃんとした投げ方をしていると思います。今年の3年生を含めて(高校生のなかで)、スピードは石垣が一番ではないでしょうか」(パ・リーグ球団スカウト)

 このまま順調に成長を続ければ、花巻東・大谷翔平(現・ドジャース)と大船渡・佐々木朗希(現・ロッテ)に続き、高校生で史上3人目となる160キロ超えを期待ができる逸材だといえる。現段階では、“新怪物候補”といったところか。

 しかし、石垣には、クリアすべき“二つの課題”がある。一つ目はコントロール。グラウンド整備が終わり、インターバルを挟んだ6回。明らかにボールが抜けて、ストレートも変化球もうまく制球ができなくなった。このため、先頭打者から2者連続で四球を与えて、ノーアウト1、2塁のピンチを招いている。石垣は、試合後に「修正しようとしても、上手く修正できませんでした。何とか0に抑えられたのは良かったですけど……」と話していた。

 もう一つの課題は、高校球界屈指のスピードボールを持ちながら、なかなか相手打者から空振りがとれない点だ。前述したように、5回に153キロを2球計測したが、1球はボール、1球は打者のバットに当てられて、サードゴロとなった。6個の奪三振のうち、ストレートの空振りで奪ったものは1個だけ。

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