男子柔道の「五輪メダリスト」はなぜ“柔の道”を離れるのか…あえて「指導者」を目指さない根本的な理由

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柔道人口減少も原因か

 それにしても、同じ競技のメダリストで、なぜ、ここまで現役引退後に差があるのだろうか。

「昔は柔道人口が多く、五輪メダリストとなれば、その後は指導者としてのレールが敷かれていました。しかし最近は徐々に柔道人口が減り、現役引退後は所属している企業に残っていても周囲からの風当たりが強くなるだけで、指導者になっても、旧態依然の窮屈な体制にはめ込まれたままです。それでも、大半は指導者としての道を歩むので、小川、吉田ら格闘技転身組はよほど山っ気があったのでしょうし、競技人口が少なくてビジネスになるかどうか保証もないのに、小川も吉田も自分の道場を持っている時点で、そのあたりの気質がうかがえます。その証拠に、吉田の吉田道場は15年ごろまでに閉鎖されてしまいました」(先の五輪担当記者)

 また男子選手の場合、昔から所属企業ではなく、母校の大学を練習拠点にする傾向があるという。色々なタイプの選手がいたり、自分のペースで調整できたりと、選手にとってはメリットが多いのが理由だというが、

「自由時間も多く、柔道仲間や関係者との酒席もあります。強くなるにつれて人脈も広がっていくと、色々な誘惑も多くなります。『もっと金を稼いで、いい生活をしたい』と考えても、決して不思議ではありません」(同)

 企業に所属して給与をもらっていても、所属先の監督やコーチになれるかどうかは未知数。家族がいれば、現役引退後の生活に不安が残るので、大金を稼げる格闘家への転身を図ることを考えるケースが頻発してしまったのだという。

「丸山被告や内柴は現役引退後、その人柄も影響していたのか、指導者としてのオファーがなく、丸山被告はマルチビジネスの道を歩み、出所不明の金で自宅に隣接する豪華な道場を設立しました。内柴は故郷・熊本の大学の女子柔道部のコーチとしてのオファーを受けたものの、部員との不適切な関係が刑事事件に発展しました。石井の場合、そのスタイルから、もともと柔道界の異端児と言われており、就職先を巡り、当時、国士舘大の監督だった故斉藤仁氏と険悪な関係になってしまい、自分の可能性にかけて格闘家転進を果たしました」(同)

 女子の場合、所属先の実業団で練習することが多く、統制も取れており、高校や大学の部活動と同じマインドで練習を続けることになるという。

「男性選手に比べて山っ気がある選手も少なく、いずれ結婚して安定した生活を築くなどしたら、現役引退後も指導者として面倒を見てくれる企業を辞めるメリットがありません。なので、女子のメダリストは人生での“勝ち組”が多いのです」(同)

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