ベスト8敗退も「大岩ジャパン」の進化は明らか W杯でも活躍が見たい「5選手」

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藤田譲瑠チマの“極上のパス”

 その視点から注目したい選手をピックアップしてみた。

 まずはGK小久保怜央ブライアンである。彼のプレーについては改めて紹介する必要はないだろう。スペイン戦は3失点で試合後に号泣したが、彼が日本のベスト8進出に貢献したことは疑う余地がない。

 的確な判断での飛び出し、ぎりぎりまで待って、相手のシュートコースを読んでの冷静なブロック、空中戦での安定感など、いますぐフル代表に入れてもいい。

 現在の森保ジャパンのGKは前川黛也、大迫敬介、谷晃生の3人が争っていて、飛び抜けた存在がいない。このため小久保にも、フル代表の正GK争いに加わる資格は十二分にある。

 ボランチでは藤田譲瑠チマが遠藤航の後継者となれるだろう。スペイン戦では肉弾戦を演じたが、それまでの3試合は無理することなく相手のボールを奪っていた。そのエレガントなボール奪取能力は、これまでの日本のボランチにはない才能である。さらにボール奪取後は、まず縦パスを選択して攻撃の起点になっていた。

 イスラエル戦での決勝点につながった佐藤へのインサイドキックは速くて強く、佐藤のスピードを殺さないよう気遣った極上のパスだった。

飛躍が期待される細谷

 彼ら2人に続く選手として、CBの高井幸大とSB関根大輝、FWの細谷真大の名前をあげたい。

 19歳の高井は192センチの長身のため空中戦ではどの試合も互角以上に渡り合った。手を使って相手を止めるようなことはしないクリーンな守備が持ち味で、難しいボールを簡単に止める足元の技術と正確なフィードも彼の持ち味である。

 残念ながら押し込まれたスペイン戦では何度も空中戦でクロスを跳ね返していたが、クリアが“単なるクリア”になっていた。これを味方につなげられるようになれば、さらなるスケールアップも可能だし、板倉滉の後継者としても期待できる。

 関根も187センチの長身が魅力のSBで、CBも務めることができる。フル代表の右SBは冨安健洋や菅原由勢、6月のW杯予選では相馬勇紀らが務めたが、冨安はケガがちだし、菅原も相馬もレギュラーポジションをつかむまでに至っていない。

 オランダのAZアルクマールへ移籍した毎熊晟矢も新天地での活躍次第で再び招集されるかもしれないが、選手層を厚くする意味でも関根は楽しみな存在だ。

 そして最後に細谷である。グループリーグでは脇役に回ることが多く、やっとイスラエル戦で大会初ゴールを決めた。しかしスペイン戦では確実なポストプレーで攻撃の起点になるだけでなく、そこからのドリブル突破でチャンスも演出した。Jリーグでのプレーを五輪の大舞台でもしっかり披露した。

 さらにオフサイドで取り消されたが、CBを背にしてのトラップから反転シュートに至る一連の動きはスペインの度肝を抜いたことだろう。彼にはJリーグでゴールを量産することで、代表復帰、さらには海外移籍を果たして大きく飛躍してほしい。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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