古閑美保、上田桃子ら女子トップ選手を育てた坂田信弘さん “文筆家”として軽く1億円以上稼ぐ「クラブとペンの二刀流」だった

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前例のない“二刀流”

 ゴルフジャーナリストの児島宏さんは振り返る。

「現役のプロと物書きの二刀流は例がなかった。プロならではの視点や洞察力があり、読み物としても面白かった。体の動きについても具体的な表現で分かりやすく、反響を呼びました」

 88年、ナイジェリアのイバタンオープンで初優勝を飾る。優勝はこの1回にとどまった。一方、90年から連載が始まったゴルフ漫画「風の大地」(作画・かざま鋭二)の原作を担い、93年に小学館漫画賞青年一般部門を受賞、文筆業でますます注目を浴びる。

「俺が育てた」などとは言わなかった

 90年代初めには出場は年10試合に満たず、記者として観戦取材にあたっていた。文筆業で軽く1億円以上を稼ぎ、坂田塾は実現できた。

 94年、写真誌「FOCUS」の取材に〈カネは、研修生やジュニア塾や、人間につぎ込んでいるから。マンションも家もクルマも、なんにもない〉と語った。

 2008年からは大手前大学のゴルフ部監督に。ゴルフの無名校だったが、指導2年目で女子チームが全国大会で優勝を果たした。

 1男1女を授かり、長男の雅樹さんはプロゴルファーに。取材と各地の坂田塾の指導のため、自宅に帰るのは年に10日ほどだった。

「“家庭人としてはダメで、プロゴルファーとしては三流、自分の失敗や反省がゴルフの指導の中に入っている”と話していました。塾の出身者が大成しても、俺が育てたなどと一切言わなかった」(朝山さん)

 7月22日、76歳で逝去。

 体調を崩していたことは家族以外に伝えていない。 気持ちの上ではプロゴルファーで、物書きではない。そんな複雑な思いがあったという。いずれにせよ立派なゴルフ界の功労者だ。

週刊新潮 2024年8月8日号掲載

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