習近平を「国賊」「独裁者」と叫ぶ横断幕が出現 2年前にも似た垂れ幕が 首謀者は現在“消息不明”

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「ストと授業ボイコットで、独裁者であり国賊の習近平を罷免し統制に反対しよう」

 先月30日、中国湖南省新化県のある陸橋に、中国の最高指導者、習近平国家主席を「独裁者」「国賊」と呼ぶとともに、体制の打倒を叫ぶ横断幕が掲げられた。

 横断幕はもうひとつあり、こちらには「特権ではなく平等、統制ではなく自由、うそではなく尊厳性、文革(文化大革命)ではなく改革、指導者ではなく投票、奴隷ではなく公民であることを望む」と記されていた。【相馬勝/ジャーナリスト】

模倣品の製造

 さらに、この横断幕による抗議行動に触発されたのか、2日後の8月1日には、軍服、制帽姿の男性が北京市中心部の繁華街のビルの屋上から、縦長の横断幕を掲げている様子がSNS上で公開された。横断幕には「雲南省昆明市政府は12年兵役についた退役軍人を絞め殺している」と書かれており、年金の額など、退役軍人の待遇への不満を訴えたものとみられる。退役軍人の抗議行動はかねてみられており、それほど珍しいことではないが、このような当局に対する抗議行動が連続して起きたことで、市民の間で生活上の不満が高まっていることは間違いない。

 特に、湖南省のケースでは、かなり激しく習氏を批判したうえで、習氏の退陣を求めており、2年前の2022年10月に首都・北京の第3環状線の陸橋にかけられたもの「独裁的な泥棒 習近平を打倒せよ」とほぼそっくりだ。その際、警察は首謀者として、北京市内に居住する物理学者の男性を逮捕しているが、この男性はいまだに消息が分かっていない。弁護士を雇って裁判に訴えようにも、家族も24時間、当局の監視下にあり、男性も消息不明なので、何ともできない状態だ。このまま一生、世間に知られぬまま、当局に幽閉され、命を閉じる可能性も否定できない。

 2つの横断幕事件の違いは、2年前は、政治に対する批判精神が旺盛な知識人が多数居住する首都・北京で起こっているのに対し、今回は湖南省の中央部に位置する婁底市のその衛星都市である新化県という、いわば“片田舎”で起こったことだ。

 中国の場合、日本とは違い、市の方が県より大きな行政区画であり、婁底市は湖南省の省都、長沙市から西に約150kmのところに位置する。今回の事件が起こった新化県は婁底市から、さらに西に75kmほど離れている山村で、山々には棚田が広がっているほどだ。その自然を生かした観光業や農業が盛んな地域だ。

 中国の各種報道によると、新化県では骨董品の模倣品の製作が盛んに行われ、最近まで、その技術を生かし、ニセの硬貨を製造する者もいたという。現在では警察の取り締まりが厳しくなり、偽硬貨製造は下火になったものの、他地域では新化県出身者による偽硬貨製造事件も起こっているという。つまり、新化県は農業、観光業のほかは、めぼしい産業がなく、とても豊かな地方都市であるとは言い難いのだろう。

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