ドイツが「欧州の病人」に戻る…米ミサイル配備で「ロシアとの最前線」に“復帰”すれば、経済への悪影響は必至

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ウクライナ戦争で流れが反転

 ドイツがロシアとの最前線に再び立たされるリスクも浮上している。

 2026年から米国製長距離ミサイルをドイツに配備との決定を受けて、ロシアのプーチン大統領は7月28日、「冷戦時代の出来事を彷彿とさせる」と批判し、「ロシアは対抗措置として同様のミサイルを配備する可能性がある」と述べた。

 冷戦時代の米国は、モスクワに届くとされた中距離核ミサイル「パーシング2」を西ドイツに配置した。ソ連が中距離弾道ミサイル「SS-20」を東ドイツに配備したことへの対抗だったが、結果として当時の東西ドイツは核戦争の危機にさらされる地域になってしまった。

 その反省から、冷戦終結とドイツ再統一を経た後は、エネルギー協力を中心にロシアとの関係強化に努め、自国の領土が二度と核戦争の舞台にならないよう努めてきた。だが、ロシアのウクライナ侵攻以降はその流れが反転し、ドイツの地政学リスクはその後も高まる一方だ。

 今回の決定に関するドイツ国内の評判も悪い。国民の49%が反対し、賛成の45%を上回った。与党や連立政権内からの不満が噴出している(8月4日付ZeroHedge)。

 ドイツのショルツ首相は、未曾有の危機を乗り切ることができるのだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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