「推し」や「公式」にカネを貢がないとファン失格? “癒やし”より“しんどさ”が勝る「推し活疲れ」の正体
推し活がしんどい
もはや学校や職場でも日常的に聞く言葉になった“推し活”。何かとストレスの多い現代人にとって、推し活は一種の宗教的な行為なのかもしれない。「推しがいるおかげで仕事が頑張れる」「推しが生きがい」と話す人は老若男女問わずいるし、推し活という言葉が普及したことで、以前と比べるとオタクであることをカミングアウトしやすくなったと話す人も少なくない。
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しかし、そんな推し活に疲れている、いわゆる“推し活疲れ”の若者が増えているようだ。ある地下アイドルのファンA氏はこのように話す。
「昨年までは熱心に推し活をしていましたが、最近ではその熱も冷めてしまい、推し活で知り合った友達とも距離をとっています。というのも、公式も周りも、推しのためにグッズを大量に買うようにと圧力をかけてくるんですよ。そして、ファンの間でも“僕はこんなに貢いだぜ”とマウントの取り合いになっている。人間関係もしんどく感じるようになりました」
その地下アイドルのライブに行くと、ステージ上のアイドルが曲の合間に「グッズを買ってね!」とファンを煽る。ライブの前後ではファンが競うようにグッズを買い求める光景が目に付く。SNSには買い求めたグッズを並べてマウントをとる人もいる。A氏も同様にグッズを買いまくっていた時期があったが、「資金的に続かない」と思い、ある時を境に推し活をやめると決めたそうだ。
貧富の差と序列がはっきりわかる
無論、推し活にはルールなど存在しない。どのように推そうがその人の勝手のはずである。しかし、昨今の推し活ではファンの間に一種のヒエラルキーが存在し、それが推し活疲れを招く要因になっているという。あるコスプレイヤーを推しているB氏は、「“お金を貢いだ方が偉い”という空気感が醸成されつつあるのがしんどい」と話す。
「コスプレイヤーが開催するイベントに必ず参加し、ライブ配信でスパチャ(投げ銭)をするのは序の口。イベントや年に一度の誕生会でいかに高額なシャンパンを開けるかで、対応も違ってきたりするので、ファンの間で序列ができてしまう。会場でそれが可視化され、明確に財力の差を見せつけられるのが嫌ですね」
コスプレイヤーやアイドル、またコンカフェ(編集部注:コンセプトカフェのこと)嬢の誕生会では、高額なシャンパンのボトルが開けられるのはもはや普通の光景になっている。あるコスプレイヤーの誕生会では、コスプレイヤーの顔がラベルに印刷された“オリシャン”(編集部注:オリジナルのシャンパンのこと)を参加者ほぼ全員が開けていたようだ。Xを調べてみると、誕生会で高額なシャンパンを開けた人の名前を貼りだしているコスプレイヤーも存在していたが、これはさすがにやり過ぎではないかと思う。
なかには「安月給ですが、十数万円するシャンパンを開けるために毎月貯金しています」と、推しに告白するファンもいた。“推し”は「嬉しいです!」「頑張ってください!」と感謝の気持ちを述べていたが、コスプレイヤーではなく、いわゆる“夜の蝶”とやりとりしているように感じてしまうのは筆者だけであろうか。
推し活疲れを招いている背景には、推しに使った金額が可視化され、マウントの取り合いがファンの間で起こっていることも大きな要因であろう。
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