【甲子園開幕】炎天下のグラウンドは「死者が出てもおかしくない」…少年野球よりも遅れている高校野球の「酷暑対策」は変革できるか
2022年から2部制を導入
この夏もうだるような暑さが続き、気象庁からは連日、全国各地に熱中症警戒アラートが出されている。そんな中、7日に開幕を迎えたのが高校野球の夏の甲子園大会だ。近年は暑さのため外出を控えるよう呼びかけるテロップが映るテレビ画面の中で、高校生が炎天下で試合を繰り広げているというシュールな光景を目にすることも珍しくなくなった。今や、酷暑の中での開催の是非が議論になるところまでが「夏の風物詩」となった感がある。
今大会では、日程の一部で試合を午前と夕方に分け、真昼の最も暑い時間帯を避ける「2部制」が導入されることになった。昨年の大会からは5回終了時に10分間の休憩を取る「クーリングタイム」を実施している。今月で開場から100年を迎えた甲子園を舞台に長い伝統を築き上げてきた高校野球も、深刻な気候変動を前に変革を迫られている格好だ。
実は暑さ対策という点では少年野球の方が先行している。全日本軟式野球連盟(全軟連)が神宮球場など都内の複数会場で開催する小学生の軟式野球の全国大会「全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」では、2022年から2部制が導入されているのだ。第1試合を8時30分、第2試合は10時25分開始とし、午後の試合開始時間は4時や5時55分に設定。6イニング制で1時間半を超えると新しい回に入らないというルールなので、試合展開にかかわらず予定通りに進行させることができる。
9月開催に変更の大会も
さらに、日本スポーツ協会が全軟連などと8月に鳥取県で開催する「全国スポーツ少年団軟式野球交流大会」では今年、より踏み込んだ対策が発表された。試合開催を午前と午後に分けるだけではなく、前日に熱中症特別警戒アラートが出たら試合を中止するほか、試合開催中も1イニングごとに気温と湿度などから算出される暑さの指数「WBGT」を測定し、31以上となった場合は試合を打ち切ることを決めた。同点の場合は勝ち上がるチームを抽選で決めるという。
近年の酷暑は「災害級の暑さ」などと言われ、大袈裟ではなく命に関わる危険がある。子どもや学生のスポーツで安全が最優先されることは当然で、試合を中止したり打ち切ったりする判断も不条理とは言えないだろう。小学生の軟式野球大会のGasOneカップはかつて暑い盛りの8月に開催されてきたが、暑さによる体調不良の子どもが出てしまい、5年前から9月開催に変更している。他競技の例を見ても、サッカーでは高校総体の開催地を比較的気温が高くない福島県や北海道に固定するという対策を打ち出した。もはや大会の運営方式そのものの見直しが避けられない状況になっている。
高校野球も2部制の実施などで遅まきながら一歩踏み出した形だが、なぜ少年野球のような対策がとれないのか。高校野球に詳しいジャーナリストが指摘する。
「2部制導入といっても、1日3試合の予定となっている開幕から3日間だけ。4日目以降は例年通り、日中も間を空けずに1日4試合を行う日程が組まれています。今年はあくまでテストケースの段階で、抜本的な改善とは言えません。大会を通して2部制を実施するとなれば、現行の日程で試合を消化することはできなくなる。出場校数や大会期間を変更することも考えなければならず、簡単な決断ではありません」
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