NHK「中川アナ」が何を着ようが彼女の自由 女性を支配する“男目線”…日本の後進性にア然とする

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胸元が少し開いていると注意される

 オペラ歌手をはじめとする女性の演奏家を例にとると、日本で行われるコンサートで、彼女たちはフランス人形のようにスカートが広がり、あちこちにフリルがついたパステルカラーのドレスを着用し、かわいらしいリボンで髪を飾っていることが多い。だが、ヨーロッパ在住の女性歌手がいう。

「ヨーロッパではクラシック音楽の演奏会でも、いまはもっと体のラインを強調した、デコレーションが少ない大人っぽい服を着ることが多いです。色も日本人が好むパステル系は少なくて、黒などのシックな色か、そうでなければ原色が多いですね。髪も日本人がやるようにお姫様みたいに飾る人はいません。日本人の女性が演奏するときのドレス姿を知っている人は、みんな『どうしてあんな不思議な恰好をするのだろう』と、首をかしげながら笑っています」

 また、この女性歌手は、日本のコンサートで次のような経験もしている。

「胸元が少し開いたドレスを着たら、観客から『そんな服装をすると人を刺激するからやめなさい』と、お叱りを受けました。でも、ヨーロッパの演奏会でみんなが着ているものにくらべたら、地味なくらいの露出度だったんですけどね」

 結果的に、日本人はかわいらしい服装に走らざるを得なくなる、というわけだが、その時点で日本人女性は、男性の目線の支配下に置かれている。それは明らかに、日本という国の後進性の表れである。

 自分がしたい服装、自分にとって快適な服装、あるいは大人の女性らしさを強調した服装を自由に選択できてこそ、女性がひとりの人間として、男性と対等の権利を得ていることになる。ところが、日本ではそういう服装をすると、「いかがなものか」と批判される。

かわいらしさは許容される後進国

 国立女性教育会館のホームページには、《男女共同参画社会は、男女が互いに人権を尊重し、「女性」や「男性」というイメージにあてはめてしまうことなく、一人ひとりが持っている個性や能力を十分に発揮できる豊かな社会のことです》と書かれている。

 だが、日本では、ベージュのインナーを着ていると「何も着ていないように見える」と揶揄され、体のラインを強調した服を着ていると「峰不二子」だといわれる。女性を思いきりある「イメージにあてはめて」おり、ヨーロッパとくらべ、男女共同参画社会からはほど遠い後進国だというほかない。

 代わりに日本で選択されているかわいらしさは、日本の女性アイドルの服装に象徴的に表れている。それは欧米、あるいはお隣の韓国のアイドルの服装とくらべると、異様なまでの少女趣味に映る。だが、少女趣味的なかわいらしさが、男性の別種の劣情を指摘することは許容されている。そんな日本の後進性に、あらためて唖然とする。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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