ベスト4進出ならず「大岩ジャパン」スペイン戦の敗因は「運のなさ」と“12人目の敵” 国際大会で勝ち抜くためには何が必要か

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 パリ五輪の男子サッカー・大岩ジャパンはグループリーグDを3戦全勝で突破したものの、日本時間3日の準々決勝では強敵スペインに0-3と完敗。目標に掲げていた56年ぶりのメダル獲得はベスト8で潰えた。【六川亨/サッカージャーナリスト】

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 スコアこそ0-3と一方的だったが、立ち上がりは決して悪くなかった。日本のベースは4-1-2-3だが、スペインボールになるとインサイドハーフの三戸舜介が細谷真大と2トップを組む形で前線に上がってプレスを掛け、両サイドFWの斉藤光毅と山田楓喜はウイングバックとなる4-4-2でスペインのサイド攻撃を封じにかかった。

 スペインは相変わらず伝統のパス回しが上手い。攻撃のスイッチが入るとボールを奪うのは至難の業。ところが日本が前線から果敢にプレスを掛けると、DF陣はパスがタッチラインを割るなど“スペインらしくない”ミスも目立った。

「これなら日本にもチャンスがある」と思った矢先の前半11分、ゴール前のこぼれ球をMFフェルミン・ロペスに強烈な左足シュートで決められてしまう。

 ここまで無失点を誇ってきたGK小久保玲央ブライアンでも触るのが精いっぱいの、伸びのある強シュートだった。そしてこの1点で、スペインは戦い方を変えてきた。

 自陣にリトリートしてのカウンター狙いに切り替えてきたのだ。中2日の連戦に加えて当日の気温は30度。消耗を避けるための、したたかなチーム戦術である。

不信感が募る判定

 しかしながら日本にチャンスがなかったわけではない。前半20分に縦パスに抜け出した右SB関根大輝が17歳のCBパウ・クバルシに倒されたが主審はノーホイッスル。

 前半27分には山田が右サイドを抜け出すも、副審はフラッグを上げずオンサイドの判定だったが、主審はオフサイドの判定。

 そして29分にはポストプレーを試みた細谷が背後からクバルシに体当たりを食らってもんどり打つもカードは出ない。日本はモーリタニアのダハネ・ベイダ主審という12人目の“敵”とも戦わなければならなかった。

 それでも日本は前半31分に右サイドを突破した山本理仁の左アウトサイドのクロスからCKを獲得したり、同32分には三戸が日本の初シュートを放ったりして懸命の反撃を試みた。

 そして前半40分、藤田譲瑠チマのタテパスを受けた細谷がクバルシを背負いながら反転しての右足シュート。これが左サイドに決まり日本が同点に追いついたと思われた。

 ところが約2分のVAR判定の結果、細谷のゴールはオフサイドと判定されてしまう。画像がでなかったし、ベイダ主審はOFR(オン・フィールド・レビュー)をすることなくジャッジを下したため、不信感の募る判定だった。

 ただ、カタールW杯では「三笘の1ミリ」で勝っただけに、「細谷の1ミリ」で負けることもVARの功罪として受け止めるしかないのが現代のサッカーだろう。

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