「細川成也」「万波中正」「水谷瞬」はなぜ、プロ入り前の評価が低かったのか? 彼らの大活躍でドラフトの“トレンド”が変わる可能性も

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今後のスカウティング方針に変化が起きるかも?

 3人の中で、最も評価が低かったのが水谷だ。筆者は、水谷の高校時代に現場でプレーを見たことはなく、映像でしか確認できなかった。その理由は、活躍した時期が遅かったからだ。2年夏までは控え選手で、その年の秋に結成された新チームでは当初、下位打線を打っていた。中軸を任されたのは、3年春からだ。

 また、守備位置にも“ネック”があった。ドラフトで指名されにくいファーストを守っていた時期もあったほか、3年夏はレフトで公式戦に出場している。守備力が高い外野手はセンターかライトを守り、守備力に不安がある選手はレフトに回されることが多い。

 3年夏の島根大会は、5試合で2本のホームランを放っている一方で、打率は2割台と高くなく、当時、ブレイクしていたとは言い難い。他球団のスカウトに聞いても「まさか支配下で指名があるとは思っていなかった」と話しており、実際にプロ入り後も、万波や細川のように1年目から二軍で結果を残していたわけではなかった。

 ベテランのスカウトからは、3人に絡めてこんな話も聞かれた。

「ピッチャーに比べて、野手は『これは大丈夫』と太鼓判を押せる選手は本当に少ないです。『打つ、守る、走る』という三つの要素があり、打つことに関してもパワーとミートの両方を見ないといけない。全てが素晴らしい選手なんて、ほとんどいません。中途半端に、三拍子揃っている選手であれば、多少弱点はあっても何か一つ飛び抜けたものがある、もしくは、そうなれる可能性のある選手の方が、面白いのではないでしょうか。特に、打撃は最も難しい部分なので、“打てる選手“は我慢して使ってもらいやすい。これは確実にあると思います」

 今回、取り上げた3人も、プロ入り前、打撃に弱点はあったものの、類まれな長打力があり、それを伸ばすことができたことが成功に繋がったと言えそうだ。また、プロ野球の世界は、一軍で成功した選手と同じようなタイプのアマチュア選手をスカウティングする傾向がある。

 つまり、高校時代の万波や細川、水谷と似たアマチュア選手がドラフトで指名されることも十分に考えられるのだ。“一芸”の選手と言うと足や守備のイメージが強いが、彼らの成功によって“打の一芸”にスポットライトが当たる可能性が出てきそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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