「ゲスい不倫してるんじゃねえ」と妻もドン引き… 46歳夫が謳歌した“浮気ライフ”の全容

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「ゲスすぎるでしょ」

 その晩、智花さんはいろいろ質問を投げかけてきたが、奏汰さんはすんなり答える気にはなれなかった。

「すると妻が言ったんです。『ゲスい不倫、してるんじゃねえよ』と。ゲスいって……。『親きょうだいまで巻き込むような不倫、ゲスすぎるでしょ』って。そういうつもりじゃないんだ、なりゆきでと言いかけたけど、妻の射るような目が怖くて、それ以上は言えませんでした。苦労人の妻を怒らせたら怖いということを、僕は忘れていた」

 そうしているうちに彩菜さんの夫から慰謝料を請求された。智花さんもすぐに彩菜さんへ慰謝料を請求。奏汰さんは彩菜さんの夫に会って話そうともちかけた。

「泥仕合になるだけですからね。僕が言うのもおかしいけど、ここは大人の対応をしないと子どもたちを傷つける。ところが一足早く、智花は彩菜の夫が経営する会社に乗り込んでいったようです。帰宅すると、『話はついたから。もう彼女には会わないで』と一言。『私があなたと離婚するかどうかはじっくり考えるから、それまでは普通に生活して』と言われました。どういうふうに話がついたのかはわからない。あとから母が『智花さんに感謝しなさい』と言っていましたが。今も執行猶予中みたいなものですね」

彩菜さんからの「感謝」

 あれから彩菜さんがどうしているのか奏汰さんにはわからない。ときどき携帯に連絡してみるが留守電がむなしい。LINEはブロックされている。

「でも、今年の春、彩菜から携帯に連絡があったんです。公衆電話からかけていると言っていました。『迷惑かけてごめんなさい。それだけ言いたくて』と。こっちが悪いのに何を言ってるんだ、いつかまた会えると信じてる。そう言いました。彼女は『私はもうだめ』と。何がだめなんだと聞いたら、『来年、娘は全寮制の高校に入るか留学するかなの。そして私は無一文で放り出される』って。そうなったら何とかするから連絡してほしいと言いました。娘とだってこのまま会えないわけではないんだから、希望を捨てないでと。つらかった」

 彩菜さんが自ら命を絶ってしまうのではないかと奏汰さんは本気で心配した。それが態度に出ていたのだろう。智花さんからどうしたのと聞かれた。気弱になっていた奏汰さんは、つい本当のことを言ってしまった。

「智花は、また彩菜の夫の会社に乗り込んで行った。『友だちから聞いたんだけど、あなた、奥さんに報復してない?』と切り込んだそうです。『いっそ離婚してあげたら?』とも言ったと。彩菜の夫は怒り狂ったそうですが、『人の過ちを許せないような男が、いい経営者とは言えないと思うけど』と啖呵を切ってきたらしい。『あなたの不倫相手は許せないけど、だからといって夫から非人道的な扱われ方をするのは、もっと許せない』と憤っていました」

 奏汰さんはそこで改めて、智花さんの強さを感じたという。人として智花さんは、奏汰さんが対抗できるような相手ではない。大きいのだ、と。智花さんに助けてもらいながら、その一方で、弱い彩菜さんに強く惹かれ続けてもいる自分が、ただの愚か者だとわかった。

「智花さんのおかげで携帯も使えるようになった。夫から、なんとか人として扱われるようになったと、彩菜から連絡がありました。『智花さんに悪くて、もうあなたには会えない』というから、それもそうだねと……。智花には彩菜から手紙が届いたそうです。何と言ったらいいわからないと智花に言ったら、『私は同じ女性として、彼女の夫のやり方が許せなかっただけ。あなたが不倫したこととは別の話だから』って。大きいでしょ、かないません。僕は今後、ずっと飼い殺し状態なんだろうなと思います」

 智花さんは子どもたちには何も知らせていない。噂は子どもたちも聞いているのかもしれないが、智花さんは一笑に付し、世間の噂なんていうのものは信じてはいけない。自分の目で見たことだけを信じなさいと言い含めたそうだ。

「ここへ来て、智花の懐の深さに完敗しています。両親なんてますます智花ファンになっていますよ」

 それでもいつか、彩菜さんとの第2幕が始まるかもしれないと奏汰さんは希望を捨てていない。男女の関係でなくてもいい。人としてつながれる状態が来ることを祈っているんですと、奏汰さんは少し疲れたような笑みを浮かべた。

 ***

 妻への感謝を述べる一方で、どこかまだ懲りていない様子の奏汰さん……。智花さんの“強さ”を育んだ家庭環境、奏汰さんと彩菜さんとの関係は【前編】で紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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