「脅されて結婚したようなもの…」恐妻に隠れて不倫する46歳夫が選んだ、“よりにもよって”の相手とは

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きっかけは娘の「学校トラブル」だった

 奏汰さんが出会った相手は、娘の友だちの母親だ。相手が悪すぎる。仕事関係なら妻に知られる危険性はまだ低かっただろう。

「長女が学校でケガをしたんです。単なるケガではなく、どうやら友だちに突き飛ばされたらしい。周りの子どもたちから証言を得て、向こうの親や学校と話し合いをしました。こればかりは妻に任せてはおけないから、僕が出て行ったんです。最終的には学校も監督不行き届きで謝罪してくれたし、相手の両親も子どもを連れてきて長女に謝ってくれました。長女はおっとりしているタイプなので、相手のお子さんは苛立ったみたいです。周りの子からは、突き飛ばした子はキレやすいとも聞いていたので、それもやんわり注意しました。父親は押し出しの強いタイプ、母親はそんな父親に従っているように見えましたね」

 数日後、その母親である彩菜さんから奏汰さんの携帯に連絡があった。どこかで会えないかというのだ。話はすんでいるはずだし、長女のケガも捻挫程度ですんだので治療費だけ払ってもらえればいいということになっていた。それでも彩菜さんは話したいことがあるという。

「妻にも相談せず、わかりましたと即答してしまったのは、すでに僕が彩菜に惹かれていた証拠ですよね。実は彩菜を一目見たときから、体中がぞわぞわしていたんです。いても立ってもいられないようなざわつき、動悸もひどかった。それが彼女に惹かれているのだと気づいたのは、その連絡をもらったときでした」

 かつて感じたことのない高揚感と不安が一気に押し寄せていたという。何も始まっていないのに不安まで感じるのは、よほど心身の深いところで彩菜さんへの思いを発していたからだろうか。好き嫌いを超えた「何か」を感じたと奏汰さんはつぶやいた。

竜巻に巻き込まれたような気が…

 待ち合わせに指定されたホテルのロビーに行くと、奏汰さんの携帯に連絡が入った。

「ショートメールで、そのままこちらへと部屋番号が書いてあった。エレベーターで部屋のある階に到着して廊下へ出ると、すぐ近くのドアから彼女が覗いていました。部屋に入ると、彼女は『突然、ごめんなさい』と僕を見上げたんです。その顔を見て、僕は思わず彼女を抱きしめてしまった。彼女も腕に力を込めていました。それからハッと気づいて、『いや、申し訳ない。こんなことできる関係じゃないですよね』と慌てたんです。昔の彼女に会ったような、いや、会いたかった人にようやく会えたような、とにかく変な気分でした」

 彩菜さんも微笑しながら、「私も初めて会った気がしなくて、なんだか昔の恋人みたいな」と奏汰さんの思いと同じことを言った。冷静にならなければと思いながら、ふたりは求めあわずにいられなかった。

「いいとか悪いじゃないんですよね。竜巻に巻き込まれたような気がしました。僕たち、どうなるんでしょうと帰り際に言ったら、『なりゆきに任せるしかないのかも』と彩菜は落ち着いた表情で言いました。確かにそうだよなと思ったけど、僕はずっと体も心もぞわぞわしているのに、どうしてこの人はこんなに落ち着いているのか不思議でした」

 ***

 こうして始まってしまった奏汰さんの不倫関係――。【後編】では、妻の怒りを買ったというその顛末について紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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