たった1杯で「1週間分の許容量」超え? 高濃度の「PFAS」が潜む意外な“食品”
水道水やミネラルウォーターにおける検出が話題になる“発がん性物質”PSASが潜むのは、「水」だけではなかった。夏に使用頻度が高まる日用品から、日々の食卓に並ぶ食品まで、意外な“潜伏先”を紹介する。
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【決定的瞬間】えっ! 発がん性物質を堂々とまいていいの?? 土壌に染み込み、地下水脈に流出する「PFAS」を含む“泡消火剤”が、なんの防護もされていない地面に噴射される瞬間
一度でも体内に入れば、排出するには40年もの時間がかかるという。それだけ長く蓄積されるにもかかわらず、「腎臓がん」をはじめ、「脂質異常症」「免疫不全」「胎児・乳児の発育低下」など、様々な健康リスクが指摘されているのが、PFASの恐ろしいところといえよう。
「人間がPFASに曝される経路としては、水道水が主ですが、これが全てではありません」
とは、日本におけるPFASの汚染実態をいち早く調査、研究してきた京都大学名誉教授の小泉昭夫氏。
「PFASには耐熱性、撥水・撥油性、紫外線への耐性などの特徴があります。熱に強く水や油をはじく性質を利用して、様々な日用品にも使用されているのです。問題なのはその残留性。PFASの化学結合は非常に強く、多少の熱や紫外線に晒されても壊れないため自然界ではほとんど分解されません。ゆえに土壌や人体にも長年蓄積されてしまうのです」
パッケージに『フッ素樹脂加工』
例えば、夏場に出番のある日用品には、リスクが高いものが多いという。体に密接するという観点から気をつけるべき一例を挙げると、化粧品だ。特に、「“メークが崩れない”“色落ちしない”“水に濡れても大丈夫”などといった宣伝文句の商品に注意すべき」と話すのは、科学ジャーナリストの植田武智氏である。
「化粧崩れを防いだり、パウダーや顔料の伸びをよくしたりするため、撥水・撥油性の高いPFASが使用されている製品があります。具体的にはファンデーションやコンシーラー、マスカラ、日焼け止め、口紅などですが、体に直接的に触れるものですので、微量ながら口や皮膚から吸収される可能性が当然あります。人体への影響は未知数な部分が多いですが、だからこそ怖いと言えます」
夏は撥水加工の衣料品や雨具、防水スプレーを使う機会が多いが、ここにも危険が潜んでいる。PFAS研究の第一人者で、京都大学大学院医学研究科(環境衛生学)の原田浩二准教授によれば、
「日本では2000年代半ばに国立環境研究所が撥水加工を施した衣料品の調査を行っています。すると、レインウェアをはじめ、ウィンドブレーカーなどからもPFOA(PFASの1種)が出てきました。撥水加工はシリコン系とフッ素樹脂系とに分かれていて、前者であれば自然界である程度は分解され、環境や健康への影響は比較的少ない。逆にタグやパッケージに『フッ素樹脂加工』と書かれているなら、PFASが含まれていることが多いです。明記されていなくても、メーカーに問い合わせれば、最低限のことは答えてくれるでしょう」
「フッ素樹脂加工」と聞くと、「テフロン加工」などが施された焦げつきにくいフライパンを真っ先に思いつく方もいるだろう。
「もともと『テフロン』は米国の大手化学メーカー・デュポン社の商標で、このフッ素樹脂をつくる過程で大量のPFASを使っていますが、フライパンを製品化するまでの間、高温の熱で焼きつけられ、大半のPFASは分解されます。そのためフライパンの表面にはほとんど残っていないとされ、京都大学が20年に行った調査でも、新品の表面からPFASは検出されませんでした」(同)
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