柔道大国「フランス」の競技人口は「日本の4倍以上」 国際化したJUDOに募る“不満”…専門家は「チャレンジ制度の導入も検討すべき」

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魅力に欠けたポイント柔道

 つまり組み手争いは嘉納治五郎の時代に遡れるほど、柔道の伝統に根ざしていると言える。さらに日々進化を遂げていることから、日本的な柔道の枠組みでも変化が起きている。

「つまり日本人選手も柔道を頻繁にアップデートしていますから、柔道もかつての柔道とは異なっています。こう考えると柔道とJUDOという二項対立で考えること自体に、やや無理があると言えるのではないでしょうか」(同・溝口氏)

 しかも根源的なところでは、日本人の“柔道観”と外国人の“JUDO観”は著しく異なり、絶対にわかり合えない──というわけではないのだという。

 IJFは頻繁にルール改正を行ってきたが、その方向性は「一本勝ちを柔道の魅力として全面に押しだす」ことを目的にしているからだ。

「『ポイント柔道』という今では死語になった言葉があります。私が出場した1992年のバルセロナ五輪では全盛期でした。当時は『一本』と『技あり』の他に、『有効』と『効果』というポイントがあり、当時の審判は立ち技の“見栄え”を重視し、かなり綺麗に技がかからないと一本と認めなかったのです。外国人選手は、一本や技ありを捨て、有効や効果を取って逃げ切るという戦術が横行していました。その結果、選手は、投げられないようにするためジャストフィット柔道衣の袖を短くし着用していました。これがポイント柔道で、私たちは五輪出場にあたり、ポイント柔道にどう対処するか徹底的に研究しました」(同・溝口氏)

「審判を時計にしろ」

 日刊スポーツは1992年3月、「柔道 女子120人が強化合宿 テーマは寝技」との記事を掲載した。なぜ寝技の合宿を開いたのか。それは立ち技を外国人審判が正しく判定してくれない懸念があったからだ。記事を引用させていただく。

《金メダルのカギは寝技が握る。審判の主観によって判断が異なる立ち技に比べて、抑え込んでからの時間による寝技は客観的な判定が下しやすいからだ。特に欧米の審判の前で、確実に勝つ場合には寝技は大きな武器となる》

 もちろん溝口氏も、この合宿に参加した。コーチ陣からは「審判にジャッジをさせるな。審判を時計にさせろ」と檄が飛んだという。

「立ち技は審判の“ジャッジ”に左右されますが、どんな審判でも寝技(押さえ込み)なら客観的に判定し、時間の計測に入ります。これが“審判を時計にしろ”の意味です。私の決勝戦は地元スペインの選手との対戦で、まさに敗因は得意の寝技に持ち込めなかったからでした。ポイント柔道が日本人に不評だったのは当然ですが、世界の柔道関係者も同じだったのです。2008年に効果が、16年には有効も廃止され、一本と技ありだけになりました。ポイント柔道は姿を消し、立ち技による豪快な一本勝ちも増えたのです」(同・溝口氏)

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