「名水百選」のはずが“PFAS汚染現場”に 「健康診断で脂質異常症が出始めて…」と打ち明ける住民も

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 全国各地で“発がん性物質”PFASの検出が相次ぐ。政府の対策が後手に回る中、東京都内も含む“汚染現場”からは、驚きの声が聞こえてきている。「名水百選にも選ばれていたはずの水を飲んでいたら……」という、悲痛な訴えを紹介する。

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「PFAS(ピーファス)」とは、約1万種あるとされる有機フッ素化合物の総称だ。もともと自然界には存在せず、分解されにくいため、“永遠の化学物質”とも呼ばれている。

 恐ろしいのは、水などを介して人体に取り込まれると、臓器などに蓄積されてしまうことだ。一度でも体内に入れば、排出するには40年もの時間がかかるという。それだけ長く蓄積されるにもかかわらず、WHOや米国の学会などでは、PFASがもたらす健康リスクとして、発がん性や高コレステロールを伴う脂質異常症、乳児・胎児の発育低下などが指摘されている。

 中でも、PFOS(ピーフォス)、PFOA(ピーフォア)と呼ばれる2つの化学物質は特に有害性が高いとされ、国際条約の規制対象で、日本でも輸入や製造が禁止となっているのだ。

脂質異常を示す検査結果

 現在のわが国で深刻なのは、これらの化学物質が、全国各地の河川や地下水などの「水源地」で相次いで検出されていること。しかも、国の定める暫定目標値よりも、はるかに高い濃度で残留しているというのである。

 実際に“汚染現場”とされる地域であがっている声を紹介しよう。

「2022年の新聞記事で、多摩地域の地下水から、高濃度のPFASが検出されたのを知りました。人体への悪影響もあると書かれているものだから不安になって、夫と一緒に血液検査を受けることにしたのです」

 と話すのは、東京都国分寺市に住む主婦の長田文子さん(71)だ。

「検査結果を見て驚きました。米国の研究では、PFASの血中濃度が1ミリリットルあたり20ナノグラムを超えると“特に注意が必要”と言われるそうなのですが、私の数値はPFOSとPFOAを合わせて33・3ナノグラム。夫も同じくらいでした。結果票には『身体への影響』として“免疫低下”“脂質異常”“胎児への影響”“腎がん”など様々なリスクが書いてあって不安になりました」

 健康リスクについて、長田さんは思い当たる節があったとして、こう振り返る。

「私の職場では、毎年4月に健康診断があったのですが、50代の頃から脂質異常を示す検査結果が出始めたんです。食生活に問題があるのかと思い、食べ物には気を配っていたのですが、退職してからも変わりがない。今思えば、これはPFASが原因だったのではないかと疑ってしまいます。同居している40代の息子も、数年前から健康診断で脂質異常を指摘され気が気じゃない。なんせ息子は0歳の頃から国分寺の水を飲んでいるので……」

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