「天皇陛下の熟慮の言葉に感動した!」 東京五輪開会式「たった39字」の開会宣言に込められた配慮
3代で開催宣言
「宣言は基本形があるわけですが、組織委の橋本会長と、IOCのトーマス・バッハ会長のスピーチが長すぎたということでしょう。日本では否定的に報じられました。時事通信は『自己陶酔と正当化の20分 開会式の会長あいさつ〔五輪〕』という記事を配信。記者の署名原稿で、《天皇陛下をお待たせしたまま、2人合わせて20分間に及んだ》と手厳しい指摘でした」(同・記者)
天皇陛下の宣言は39文字と紹介した。2人のスピーチも文字数を数えてみよう。橋本会長は約1300字で、バッハ会長は約2700字。陛下と比較すれば、約33倍と約69倍。確かに「長い」と苦情が出て当然だろう。
皇室ジャーナリストの神田秀一氏は、1964年の東京五輪で「天皇陛下の真下」にいたという。当時、神田氏はNETテレビ(現・テレビ朝日)の社員だった。
「昭和天皇が全く緊張しておられなかったことを、鮮明に憶えています。上皇陛下は1998年に長野オリンピックで開会宣言を行われました。祖父、父、息子の3世代で開会宣言を行われたことになります。それぞれ個性をお持ちでいらっしゃいます。とはいえ、やはり歴代の天皇陛下の立ち居振る舞いには、ある種の共通点があることに改めて気づかされます」
天皇の“帝王学”
国家元首は選挙で選ばれるケースが多い。アメリカ大統領は言うに及ばず、日本の総理大臣も選挙で選ばれた国会議員から選出される。政治家によって個性があり、その個性を有権者が評価する。
むろん、天皇陛下は選挙とは無縁の存在だ。「国民統合の象徴」として存続していくことが求められる。伝統的な皇室のイメージと異なるような個性を出してしまうと、尊厳が失われてしまう危険性さえある。
「とはいえ、あまりに没個性でも問題です。国民は天皇陛下に威厳や品格のような特殊性も期待しているからです。天皇陛下は、国会の開会式、全国植樹祭、国民体育大会といった場でお言葉を述べられます。伝統を守り抑制的でありながら、国民にしっかりメッセージを伝える必要があるわけです。矛盾していることは言うまでもなく、やはりご苦労があるのではないでしょうか」(前出の記者)
そこで焦点になるのが“帝王学”だという。
「特に重要な舞台になるのは、天皇陛下と皇太子さまが一緒に食事をされる時です。代々の天皇陛下は常に、『天皇とは一体、何なのか』を考え続けていると言っても過言ではありません。天皇家が国民と共に歩むためにはどうすればいいのか、折に触れて、天皇陛下は皇太子に伝えられるのです」(前出の神田氏)
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