「天皇陛下の熟慮の言葉に感動した!」 東京五輪開会式「たった39字」の開会宣言に込められた配慮

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 パリ五輪では、アスリートたちの躍動とは裏腹に、それ以外ではブーイングが目立つ状況である。審判の誤審、セーヌ川の水質、選手村の食事等々への批判は多い。

 そもそも開会式もかなり論争を呼ぶものであった。セーヌ川や歴史ある街並みを活用する、というプランはアイディアの段階では絶賛を浴びたものの、実際に見ると違和感や抵抗をおぼえる向きが多かったようだ。結果として、直前にさまざまなゴタゴタが起きた前回、東京五輪の開会式の株が上がったという面も……。

 東京五輪開会式においてとりわけ評判を呼んだのが、天皇陛下の開会宣言だった。たった39文字の宣言にもかかわらず、陛下ならではの配慮が感じられたからだ。当時、この宣言は、IOC会長らの長いスピーチよりも圧倒的な感動を呼んだ。

 一体、どのようなものだったのか。そこには陛下ならではの熟慮があったのだ。(2021年7月25日掲載記事をもとに再構成しました)

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熟慮の価値

 2021年7月23日の夜、東京五輪の開会式が国立競技場で行われた。大会名誉総裁を務める天皇陛下が開会を宣言されたが、これが反響を呼んでいる。

 非常にシンプルな文言だった。「私は、ここに、第32回近代オリンピアードを記念する、東京大会の開会を宣言します」──読点を入れても僅か39文字。担当記者が言う。

「文言はIOCが定めたオリンピック憲章で“定型”が決まっています。原文は英文と仏文で、JOCの公式サイトに掲載された日本語訳は『第32回近代オリンピアードを祝う』でした。天皇陛下は『祝う』を『記念する』に変更され、大きく報道されました」

 メディアは「『祝う』の言葉では、天皇陛下がコロナ禍での五輪開催を祝福していると誤解を招く」ことを宮内庁などが懸念したと伝えた。

「専門家の間では、文言を変えた是非などについて詳細な議論が行われていますが、世間一般は、この点に関してほとんど関心はないようです。ネット上では、『天皇陛下が宣言を行われる間、菅首相と小池都知事が着席しており、しばらくすると慌てて立った』ことが、問題視されています」(同・記者)

 そんな仲、「天皇陛下の短い宣言に心を打たれた」という意見も多かった。

 例えばTwitterなら、《天皇陛下の短くも重みのある開会宣言が印象的でした》、《話が短い順に評価が高い》という具合だ。

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