「田舎の地主が億万長者に」「“タダでもいい”と思っていた土地が1坪100万円」 半導体工場用地バブルに沸く熊本県で何が起きているのか

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痛々しい光景

 他の農家も、「倉庫を建てたいので農地を売ってほしい」などとたびたび業者が訪ねてくると言った。後継者がいない農家はたいてい売るそうで、実際に信孝さんの案内で成田空港周辺を走ってみると、売却後に造成された土地や、雑草だらけになった農地が、あちこちに点在して虫食い状態になっていた。なんとも痛々しい光景である。

 昨年だけで東京23区の6割に相当する面積の農地が日本から消えた。これが今年も、そして来年も続く。それにしても、国家の生命線である食料の生産手段である農地を、農家という農家がなぜ手放すのだろうか。

奥野修司(おくのしゅうじ)
ノンフィクション作家。1948年生まれ。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で講談社ノンフィクション賞と大宅ノンフィクション賞を受賞。『ねじれた絆』『皇太子誕生』『心にナイフをしのばせて』『魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く』など著作多数。

週刊新潮 2024年8月1日号掲載

特別読物「日本の農業危機 『売られる農地』『消える農家』」より

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