優勝した照ノ富士は「ヒザの負担を考え前に出る相撲に変えていた」、途中休場の豊昇龍は「このままでは横綱が望めない」【音羽山親方の名古屋場所総括】
隆の勝は相当自信がついたのでは
――一方の隆の勝関にとっては、一気に「初優勝」のチャンスが転がり込んできたわけですが……。
音羽山:隆の勝は7日目まで(不戦勝を含む)4勝3敗で、けっして調子がいいわけではなかったんです。だけど、彼のような押し相撲の力士は、調子の波に乗ると手がつけられなくなるんですよ(笑)。
もともと力がある力士で三役も務めていましたが、ケガで平幕に番付を下げていた。このところ、癒えてきたようで、本来の相撲が取れるようになりました。8日目から勝ち続けて、気持ちは「イケイケ!」。千秋楽、大の里を破って、優勝決定戦に出場したのは、立派だったと思うし、本人は相当自信がついたのではないでしょうか?
――優勝決定戦の一番は、照ノ富士関がヘトヘトになっているようにも見えましたが、そんな状態の中、隆の勝関に勝利。先場所の総括で親方がおっしゃった、「番付の意味」「横綱の威厳」は保ったと言えますね?
音羽山:横綱としたら、結びの一番で勝ってすんなり優勝を決めたかったでしょうけど、決定戦はもう気力で取っていたような感じがしました。
ここ数場所は、下位の力士の幕内最高優勝が続いて、本来の番付の意味が薄れてきていました。やはり、横綱、大関がしっかりと土俵を締めてこそ、大相撲が成立します。照ノ富士も、「出場した以上、優勝しなければならない」。そういう使命感があったと思いますし、「優勝10回」は彼の目標だったので、場所が終わった今は、だいぶ気が抜けているんじゃないかな(笑)?
横綱は並大抵の地位ではない
――大関陣は琴櫻関以外、成績を残すことができませんでしたね。
音羽山:皆勤して5勝10敗に終わった貴景勝。関脇に下がる来場所は、特例で10勝を挙げれば大関に復活できるのですが、今の首の状態を見ていると、10勝というのはハードルが高いように思います。まだ若い(8月5日で28歳)ので、ケガを治して出直してほしいところですが、本人がどういう判断を下すのか、見守りたいですね。
そして、途中までいい感じ(12日まで9勝3敗)で来ていた豊昇龍は、13日目から休場。彼の相撲は、投げ技が多いんですよ。投げを多用するとケガをしやすくなることは、わかっていると思うのですが、このままでは、もう1つ上の地位(横綱)は望めません。堂々と相手を受け止めるような相撲を取れるようにならないとね。
琴櫻は大関の中では成績が安定していますが、勝ち越すとホッとしてしまうことと、優勝の可能性がなくなると相撲が淡白になる傾向があるようです。体も十分大きいので、じっくり相手を受けて、慌てないような相撲を取ること。横綱というのは、並大抵の地位ではありませんから……。
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