優勝した照ノ富士は「ヒザの負担を考え前に出る相撲に変えていた」、途中休場の豊昇龍は「このままでは横綱が望めない」【音羽山親方の名古屋場所総括】

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 現役時代は右四つからの下手投げを得意とするなど、「玄人好み」の相撲で活躍した71代横綱・鶴竜。昨年12月には東京都墨田区に音羽山部屋を創設した。4月からは元弟弟子の関脇・霧島が転籍して、同部屋は活気を帯びている。名古屋場所前は霧島を連れて、一門の部屋へ出稽古に行くなど、積極的な指導をおこなっている音羽山親方に、名古屋場所の土俵を振り返ってもらった。【ノンフィクションライター/武田葉月】

どんどん前に出る相撲に変えた照ノ富士

――先場所、先々場所は、大銀杏を結えない「ちょん髷力士」、尊富士関、大の里関が優勝。ところが、今場所は休場明けの横綱・照ノ富士関が初日から10連勝と突っ走りましたね!

音羽山:場所前は出場するのかどうか、出てもどこまで照ノ富士本来の相撲が取れるのか? 疑問視されていた部分もありました。

 ところが出場すると、これまでと別人のように積極的な相撲を取って、対戦相手を寄せ付けなかった。照ノ富士は192センチ、176キロと体格にも恵まれていて、そもそも体の力が強い。だから、立ち合い、相手力士を受けて、つかまえれば勝つことができたんです。

 ヒザ、腰の負傷で一時序二段まで番付を下げて、その後、横綱まで昇りつめたという経緯がありますが、年齢と共にヒザの状況は悪化してきています。つまり、以前のような相撲では、ヒザに負担がかかる。だから、自分から相手に圧力をかけて、どんどん前に出る相撲に変えたわけです。

――積極的な相撲が白星を生んだということですね?

音羽山:そうです。私が見た感じでは、以前より体重を少し絞って、そのおかげで動きもシャープだった。対戦相手は、これまでの照ノ富士の受ける相撲のイメージがあるので、面食らっちゃった。それが連勝につながったんでしょうね。

ただし後半戦には油断が見えた

――11日目の照ノ富士関は、先場所優勝した大の里関と対戦し、突き落としで敗れてしまいます。その後、14日目隆の勝関、千秋楽の琴櫻戦と連敗するのですが、やはり後半戦は疲れが出たのでしょうか?

音羽山:「疲れ」というよりは、10連勝したことで、自分の中で油断の心が生まれてしまったんだと思います。大の里はパワーのある力士だし、油断禁物だったのですが……。でも、ここで1敗したことで、照ノ富士に安心感も出てきて、そこから2連勝するのですが、好調の平幕・隆の勝に敗れたことで、「もう油断できない」と気持ちを立て替えたのでしょう。

 隆の勝には3月場所で敗れていて、その「悪い記憶」がよぎったこともあったかもしれません。「早く勝ってラクになりたい」という気持ちから、「勝ち急いだ」。それが敗因です。

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