放映権料は440億円!パリ五輪でテレビ局が冷や汗をかく裏事情 ロンドン大会から連続赤字、隅田川花火大会と視聴率互角の時間も
テレ朝社長の発言
「盛り上がってほしいし、盛り上がるべく様々な試みをしたい…」
これは7月2日に行われたテレビ朝日の定例記者会見で、篠塚浩社長がパリ五輪について質問を受けた際の答えだ。なかなか正直な答えだと筆者は感じた。五輪を盛り上げなくてはならない状況にあるという事を認めたような発言とも受け止められるからだ。思い返せば2021年に開催された東京五輪はコロナ禍で無観客となり、応援の声も上げづらかった。さらに宴の後は「談合事件」が世の中を騒がせる事態となり、不完全燃焼な置き去り感を覚えた国民は多いはずだ。異例の五輪を経験した日本人には、コロナ後のパリ五輪にはどこか複雑な気持ちもあるだろう。
ある局のスポーツ現場の担当者は「心配ない。始まれば盛り上がってくるのに篠塚社長の発言はまるで水をさすかのようだ」と不快感を示した。実際に序盤のメダルラッシュは明るい話題となっている。しかし篠塚社長の発言は杞憂ではなく、序盤の視聴率を見てみると不安が残る内容となっているのだ。
視聴率などを調査する専門会社であるビデオリサーチ社は、パリ五輪関連番組の視聴率を公表している。どの局を見ても、ゴールデンタイムの放送ですら世帯視聴率10%に届かない競技が散見されるのだ。NHKが7月27日の19時30分から放送した競泳女子予選は、土曜日の夜でも世帯視聴率9.1%である。同時間にテレビ東京が放送した隅田川花火大会中継は世帯視聴率が7.5%であったが、毎分視聴率という、1分単位での視聴率の推移を見ると五輪番組と互角に競う時間も多かった。
こうした中で日本テレビが7月27日の15時55分から放送したバレーボール男子予選ラウンドは土曜日とはいえ昼間の時間で世帯視聴率14.2%という高視聴率を獲得した。それでもかつてのような世帯視聴率20%を狙う勢いはその後も感じられない状況だ。同じように時差がある2016年のブラジル・リオデジャネイロ五輪の開催直後の視聴率と比較してみても、世帯視聴率は下がっているものが多い。
さらにどの年代が視聴をしているのかを調べてみると、「50歳以上」を指す、年齢層の高い「3層」と呼ばれる視聴者層が占めている割合が大きく、20代の若者の視聴割合は小さい状況だ。もちろん若者は見逃し配信サイトを通じてネット視聴をするケースも多いのだろうし、この数字は視聴率には含まれてはいない。しかしまだ序盤とはいえテレビ局関係者には気になる視聴率スタートとなっている。
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