【パリ五輪】「東京大会2冠」連覇に挑む水泳「大橋悠依」が語っていた“非エリート”の逆転法

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素直に弱音を吐く

〈ネガティブな性格以外にも、大橋選手にはトップアスリートらしからぬ一面がある。それは周囲に“弱音を吐く”ことだ。同じく世界的に活躍するイチローや大谷翔平からそんな姿は想像できない。が、この意外な行動こそが彼女の“強さ”に繋がっていた。〉

 そうですね、私は自分の内面について、周囲に打ち明ける方だと思います。どんなに強い人でも、ひとりで悩みを抱え込むのには限界がありますよね。そんなとき、私は素直に弱音を吐くようにしています。苦しい、つらいと感じながら周囲に本音を漏らさないと、自分をサポートしてくれている人たちに“大橋に信頼されていないのではないか”と感じさせてしまう気がするんです。

 もうひとつ、いまの立場になって感じるのは、常に悩みながらチャレンジを続ける、ありのままの私の姿を若い人たちに見てもらい、参考にしてほしいということです。スポーツだけに限らず、さまざまな分野で頑張っている子どもたちのなかには、後ろ向きな性格を気に病んで挑戦を諦めてしまう子もいると思います。そういう子どもたちに対して、「大丈夫、私もネガティブな性格で弱音も吐くけど、こうやって活躍できるんだよ」って伝えたいんです。

下剋上は可能

 そもそも、周りと比べて“悔しい”と感じるのは、自分のなかに向上心がある証拠に違いありません。自分より好成績を上げていたり、活躍している人に嫉妬心を抱いても全然いいんですよ。そうした感情に襲われるってことは、「もっと上に行きたい」という気持ちを再確認するきっかけになると思うんです。

 人生は何が起きるか分かりません。何もかもうまくいかないどん底の時期は必ず訪れます。でも、それは自分を高めるための要素をひとつひとつ積み上げるタイミングだと考えてください。じっと我慢しながら練習を続けていると、ある日、突然、習得した要素が噛み合って事態が好転する瞬間がやって来る。そこで初めて、自分が積み上げてきたものの大きさに気付くんです。たとえ、つらい時期であっても、地道にプラスになる要素を集めていれば、いつか必ず自分に返ってくると思います。

 私は初めて日本代表入りしたのも20歳を過ぎてから。じっくりと育ててもらった“遅咲き”です。そんな私の泳ぎを観て下さった方々に、たとえ何歳でも、どんな分野であっても、下剋上や一発逆転は成し遂げられるんだって感じてもらえたら嬉しいです。

大橋悠依(おおはしゆい)
1995年、滋賀県生まれ。イトマン東進所属。2017年の日本選手権で400メートル個人メドレーの日本記録を3秒以上塗り替え、優勝。同年の世界選手権で200メートル個人メドレーの日本記録を更新し銀メダル獲得。東京五輪では200メートル、400メートル個人メドレーで日本競泳女子史上初の2冠に輝き、紫綬褒章を受章した。

デイリー新潮編集部

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