【パリ五輪】「東京大会2冠」連覇に挑む水泳「大橋悠依」が語っていた“非エリート”の逆転法

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ネガティブな性格が役立っている

 ただ、東京五輪前の1~2年で考え方を変えるようにしたんです。

 一般的にはネガティブな性格はあまり良くないことかもしれません。でも、自分次第でそれを強みにもできるんじゃないかって。

 実際、私は心配性の裏返しで、レース前に油断することがほぼないんですね。泳ぐことが好きな一方、他の選手の泳ぎを見るのも楽しみなので、レースへの不安を払拭するために自分の泳ぎを確認するだけでなく、相手選手の泳ぎも徹底的に分析する。過去のレース映像はもちろん、大会当日も予選からスタンドで目を凝らしていますね。東京五輪でも準決勝に進みそうな有力選手については、スタートや壁蹴り、ターン後のドルフィンキックといった細かな技術まで把握していました。とりわけ隣のコースで泳ぐ選手の泳ぎは重点的に頭に入れていたので、本番は落ち着いてレースに集中できたと思います。

 その意味では、ネガティブな性格が競技に役立っているし、むしろ必要だったんじゃないかな、と。それに、いまの年齢になって性格を変えるのは難しい。だからこそ、ネガティブであることをポジティブに捉えて、もっと上手に活かしていきたい。最近は自分の性格ともうまく向き合えていると感じています。

ほかの選手へのアドバイスを盗み聞き

〈東京五輪での勝利によって、名実ともに世界一の称号を手にした大橋選手。その実力は誰もが認めるところだが、本人は意外な言葉を口にする。〉

 そもそも、私は自分に並外れた才能があるとは思っていないんですね。ただ、「才能=生まれ持った天性の能力」という考え方には違和感があります。私の立場からすれば「才能よりも努力の方が大事です」と言った方がいいのかもしれませんが、それとも少し捉え方が違っていて。才能と努力は紙一重というか、自分の心構えひとつでだいぶ意味合いが変わるように感じます。私の感覚では、小さな努力を積み重ねることができるのも才能のうちだと思うんです。

 この性格だからか、私はコーチの言葉を凄く気にします。他の選手へのアドバイスを盗み聞きすることも多く、その内容を自分が指導されている感覚で受けとめるわけです。「あの選手が言われてたアドバイス、私はちゃんとできてるかな?」って。私にとっては幼い頃から続けている当たり前の習慣なんですけど、どうも周りのみんなは違うみたい。とても小さなことではありますが、これも自分の泳ぎを向上させるための「努力する才能」といえるかもしれません。

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