「4000万円以上だまし取られ、返済を迫ると“年金で暮らせるでしょ”」 被害者続出の「詐欺インプラント歯科」の悪質すぎる手口

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「歯根が術後3カ月で抜け落ちた」

 高額なインプラント治療費を前金で支払わせ、健康な歯まで抜くも治療を完了させず、怒れる患者たちから逃げ回っている、千葉市内に歯科医院を構える「高橋デンタルオフィス(以下、TDO)」の院長、高橋仁一氏(57)。さらには当の高橋氏が破産手続きを開始。負債総額は約19億円にも上る。「被害者」たちが詐欺だと追及の声を上げる中、ついに警察が動き出した【前後編の後編】。

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 前編「被害者急増! 恐怖の『インプラント詐欺』に要注意 『健康な歯を抜かれ、お金も返ってこない』 負債19億円の詐欺司会の悪質すぎる手口」では、700万円という大金を支払ったにもかかわらず、健康な歯を抜かれた上、治療を途中で中断された被害男性の悲痛な告発を紹介した。

 同じく前金で治療費を支払わされ、下の歯を全て抜いて、人工歯根を4本入れたところで治療が中断してしまった被害者もいる。下顎はかれこれ7~8年間、むき出しの歯茎にチタン製の人工歯根が埋め込まれた状態のままだというこの被害者は、

「下に4本入れた人工歯根のうち2本は深さが足りなかったのか、術後3カ月ほどで抜け落ちてしまいました。いまはだいぶ慣れましたが、当初は食べ物をうまくそしゃくできず、胃腸炎に苦しみました」

 それ以降はいくら通院しても、歯をちょっと見られるだけ。高橋氏は「骨の状態がまだよくない」などと理由をつけ、治療を進めることはなかったという。

「400万円戻ってくる」と言われたが…

 一方で、高橋氏の口車に乗せられ、大金を失ってしまったケースも数え切れない。2021年3月、治療費200万円を支払った千葉県在住の主婦(50代)もその一人。初診から2週間ほど経過したある昼下がり、高橋氏からの電話で急きょクリニックに呼び出されると、以下のように提案されたというのだ。

「この春から、ジルコニアインプラントを扱っている医師の中で一番上の立場になり、学会で発表する資料用のサンプルとして3名を選べるようになりました」

 選ばれた患者は、インプラントメーカーから治療費全額が戻ってくるとの触れ込みで、サンプルになるには「条件」があった。治療費と同額の“協力金”を払える患者に限るというのだ。高橋氏は、

「追加で200万円支払っていただけると、後日400万円戻ってきます。もう既に1人は決まっているのですが、どうでしょう?」

 と迫ったという。女性はとあるウェブサイトで高評価だった高橋氏を名医だと思い込み、TDOに通っていた。「名医がうそをつくはずがない」と話を信じ、夫に相談の上で“協力金”の支払いを決断した。この時に女性が交わした契約書を見ると、21年12月末と、治療完了時の2度に分けて200万円ずつ返還されることが明記され、高橋氏の実印が押されている。

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