【追悼】「シャイニング」でジャック・ニコルソンに追われる妻を演じたシェリー・デュバルさん “大絶叫”だけじゃない女優としての姿
「シャイニング」起用のきっかけ
アルトマン監督の「ナッシュビル」(75年)などで好演、「三人の女」では老人施設の看護師を演じ、77年、カンヌ国際映画祭の最優秀女優賞を受賞。同作は85年に日本で公開された。
映画評論家の北川れい子さんは思い出す。
「彼女といえば私はまずこの『三人の女』が浮かびます。一見身近にいそうな気取り屋の女性で、女同士の見栄や駆け引きのような面倒な部分を含めた心理の動きを自然に演じ切りました」
同作で泣くデュバルさんの姿を観て、キューブリック監督は「シャイニング」に起用したという。
「ポパイ」実写版ではオリーブ役
ホラーの印象が焼き付いた一方、「ポパイ」の実写版でオリーブを演じ、81年の公開に合わせて来日もした。
「ひょろりと細身で背が高く、漫画そのまま。似ていることにも役幅の広さにも驚きました」(北川さん)
80年代に入るとプロデューサーの手腕も発揮。童話をもとにしたテレビシリーズ「フェアリーテール・シアター」は、子供向けの教育番組として評価された。
ポール・サイモンと暮らした時期も
映画出演も続けたが、2002年を最後に自ら表舞台を退く。取材も断り、隠遁生活に。16年、テレビ番組のインタビューに応じ、長く精神的に不安定だったことが明かされた。
「シャイニング」の苛酷な撮影現場がその遠因になったとの臆測が流れたが、彼女は「キューブリック監督は親切だった」と一貫して語っている。
シンガーソングライターのポール・サイモンと70年代末に2年ほど一緒に暮らしていたという華やかな一面も。80年代末以来の、生涯のパートナーはミュージシャンのダン・ギルロイ。デビュー前のマドンナとの交際で知られる人物だ。
7月11日、糖尿病の合併症により75歳で逝去。昨年、ホラー映画の脇役で女優復帰を果たしたばかりだった。
ニコルソンは87歳で健在。しかし、訃報にコメントなどは寄せていない。
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