【柔道誤審問題】「日本人は礼儀を忘れた」 現地メディアが驚いたポイントと同情したシーン

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アリーナが地震に見舞われた

 一方、同じくフランス人選手は関係しなかったものの、通常のニュースで取り上げられるほどの話題となったのは、阿部詩の号泣である。

 28日、阿部は2回戦でディヨラ・ケルディヨロワ(ウズベキスタン)に一本負けし、畳を降りた後、会場に響き渡るような声で嗚咽している。

 スポーツ紙「レキップ」はWEB版で以下のように伝えた。

「柔道競技が行われているシャン・ド・マルス・アリーナが地震に見舞われたのは、日曜日の午前11時13分だった。52キロ級のディフェンディングチャンピオンである阿部詩は、2試合目で敗れた。(中略)その時、この日本人女性の頭に空が落ち、長い間畳の上にうずくまり、そこから降りるのに苦労した。日本人コーチが、彼女が起き上がるのを、いや歩くことさえも、手伝わなければならなかったほどであった。4度のワールドチャンピオンに輝いた彼女は、観衆に『uta、uta』と雷鳴のような大歓声で支えられた」

 前出のジャーナリストは言う。

「フランス人は日本人よりも感情表現は豊かですが、それでも、あそこまで感情を露わにすることは珍しい。兄妹の同日優勝を目指していた絶対的王者が破れたというドラマティックな要素が揃っていたこともあり、より大きな関心を集めたのでしょう」

 ちなみに阿部は勝ち進めば、準決勝でフランスのアマンディーヌ・ブシャールと対戦する可能性もあった。そこで同紙は「(阿部の敗戦は)またとないチャンス」と書くことも忘れなかった。

五輪を象徴するエピソード

 オリンピックということもあってか、阿部の悲劇を情緒たっぷりの表現で描いたのは、先の「リベラシオン」である。

「彼女は叫び、しゃっくりをし、再び倒れ込み、東京の神話のようになっている交差点である渋谷スクランブル交差点の高層ビルのファサードに『偶像』のように掲げられた彼女の有名な顔を袖に隠した。役員が丁寧にコーチに彼女を連れて行くように頼んだ。しかし、阿部詩を慰めることはできない。考えられないこと、計り知れない敗北に圧倒されている」

「観客は、彼女と同じように驚愕しながらも、『uta uta』と歌い始めた。まるで『がんばれ、大丈夫だよ、チャンピオン』と言わんばかりに」

 各メディアとも概ね阿部に同情的な論調だったという。

「渋谷のスクランブル交差点はフランスでは日本の象徴のような場所。日本人にとってはパリのエッフェル塔に当たります。そうした光景を書きたくなるほど、彼女の悲しむ姿がポエムのように映ったということでしょうか。現地フランスでも、パリ五輪を象徴するエピソードのひとつとして語り継がれるようになると思います」

デイリー新潮編集部

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