男性vs.女性、白人vs.非白人、保守vs.進歩…分断を加速させる米大統領選、「ハリス」「トランプ」勝敗の鍵を握るのは米国人の経済実感

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バイデン政権の経済政策に対する評価は散々

 現下の物価高はバイデン政権の経済政策が影響している。コロナ禍で疲弊していた米国経済を立て直すため、バイデン政権は就任直後の2021年3月に1.9兆ドル(当時の為替レートで約200兆円)のコロナ対策を成立させた。巨額の財政出動のおかげで米国経済はV字回復を遂げたが、激しい物価高を助長してしまった。

 バイデン政権の経済政策のキーワードは「高圧経済」だった。高圧経済とは、景気刺激的な政策を展開してGDPの伸び率を平均以上に押し上げれば、失業率を大幅に減らすことができるという考え方だ。

 だが、高圧経済の問題点も指摘されていた。高圧経済を念頭に置いた経済政策が実施された1970年代に深刻な物価高が生じたという悪しき前例があったからだ。

 今回も同様の結果に終わってしまった感が強い。バイデン氏は「1500万人の雇用を創出した」と成果を誇るが、物価高が災いして同氏の経済政策に対する評価は散々だ。バイデン政権のナンバー2であるハリス氏も、現下の物価高に対する批判から逃れることはできない。この問題が今後、ボディーブローのように効いてくるだろう。

今後6カ月の経済成長は鈍化

 絶好調だった株式市場も変調の兆しが見えている。「AI(人工知能)主導の株高は21世紀初頭のドットコムバブルに類似しており、バブル崩壊の時が迫っている」との警戒感が生まれている(7月18日付ブルームバーグ)。

 高金利の影響で実体経済が弱まりつつあるという観測もある。米国の6月の製造業景況感指数は48.5、サービス業景況感指数は48.8と、好不況の境目である50を下回った。前者は3カ月連続、後者は2カ月ぶりだ。

 米連邦準備理事会(FRB)は7月17日に発表した報告で、今後6カ月の経済成長は鈍化するとの見方を示した。労働市場も勢いを失いつつあり、今後は失業率が上昇するとの懸念が生じている。

「たかが経済、されど経済」。一般の米国人の経済実感がさらに悪化すれば、ハリス氏の勝利は難しくなってしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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