男性vs.女性、白人vs.非白人、保守vs.進歩…分断を加速させる米大統領選、「ハリス」「トランプ」勝敗の鍵を握るのは米国人の経済実感
これまでで最も対照的な大統領候補
11月5日の米大統領選挙まで残り100日を切った中、最新の世論調査によれば、バイデン大統領に代わって民主党の候補指名を確実にしたハリス副大統領と、トランプ前大統領との支持率は拮抗している。
【写真】「この人を本当に大統領にしたい人がいる?」トランプ陣営の激しい“ハリス批判”と、女性の姿も多いハリス支持者
トランプ氏とハリス氏の間では激しい応酬が早くも始まった。トランプ氏はハリス氏を「史上最も無能な急進的な左派」と、ハリス氏はトランプ陣営を「過激派」と非難している。
今回の大統領選はこれまでで最も対照的な候補の対決だと言っても過言ではない。男性対女性、白人対非白人、保守対進歩など、あらゆる面で対立の構図となった。トランプ陣営からは「ハリス氏はDEI(多様性、公平性、包括性)の枠で選ばれたのは100%間違いない」との声が出ている(7月24日付CNN)。
「米国における支配階級である」と信じている白人、特に中下流層にとって、DEIほど自らの社会的立場を危うくしているものはない。このような白人中下流層から熱烈な支持を集めるトランプ陣営にとって、ハリス氏ほど打倒すべき相手はいないというわけだ。
ハリス陣営もバイデン陣営以上に「トランプ氏は米国の民主主義にとって最大の脅威だ」と警戒している。米国では社会の分断化が指摘されて久しいが、今回の大統領選挙を通じてますますその傾向が強まることは間違いないだろう。
ハリス氏の「若者人気」は経済次第
足元で「ハリス氏の方に勢いがある」との見方が出ている。ABC・イプソスの調査によれば、ハリス氏の好感度は1週間前の35%から43%に上昇する一方、トランプ氏の好感度は40%から36%に低下した。
だが、筆者は「大統領選の勝敗の鍵は今後の経済次第だ」と考えている。現職の大統領が再選できなかった例は戦後4回あるが、いずれも景気後退が仇となったからだ。トランプ氏も新型コロナのパンデミックに起因する景気後退で敗戦の憂き目に遭っている。
米国の今年第2四半期の国内総生産(GDP、速報値)は前四半期に比べて2.8%増と第1四半期の1.4%増から加速した。個人消費が底堅く、経済全体を牽引した形だが、「低価格品の購入が目立つなど弱さも出ている」との指摘(7月27日付日本経済新聞)がある。クレジットカードの延滞率も2012年の統計開始以来の最高水準に上昇している。
気がかりなのは、物価高が米国人のメンタルを蝕んでいることだ。米民間調査企業の調査によれば、47%が「今年ほど経済的ストレスを強く感じる年はない」と回答した。「生活苦で心の健康が破壊された」と回答した割合も41%に上っている(7月25日付ニューズウイーク日本版)。
「若者に人気がある」とされるハリス氏だが、物価高に最も悩まされているのは1990年代半ば以降に生まれたZ世代だ。バンク・オブ・アメリカの調査によれば、67%が「外食費のカットなど出費を抑えるために生活スタイルを変えた」としている。
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