岸田総理の「国立公園に高級リゾートホテル誘致」で、日本が世界の笑いものになる

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円安だから旅行先に日本が選ばれているだけ

 この6月、日本を訪れた外国人旅行者は推計で313万人5,600人となり、1カ月の人数としては過去最高になった。また、今年上半期に訪日した外国人旅行者数も1,777万人と、この時期としては過去最多を更新した。

 歴史的かつ異常な円安を背景に、外国人観光客が増え続けている。多少なりとも観光地に足を運ぶ機会があれば、だれでもそれを実感するだろう。その結果、今年のインバウンド消費額は、過去最高だった昨年の5兆3,000億円を大きく上回って、8兆円に達する可能性もあるという。

 しかし、勘違いをしてはいけない。いま日本を訪れている外国人観光客の多くは、円安で費用が安く済むから、旅行先として日本を選んだにすぎない。いったん為替動向が円高に振れれば、彼らは日本を見向きもしなくなるかもしれない。したがって大切なのは、円が高くなっても、外国人が「訪れたい」と思う日本にするために、私たちの資源を磨き上げることである。

 では、どうやって磨き上げるのか。岸田文雄総理が打ち出した方針は、日本の観光資源を磨き上げることにつながるだろうか。

 総理の方針は7月19日、総理官邸で開かれた観光立国推進閣僚会議で表明された。国立公園制度がはじまって100周年を迎える2031年度までに、全国35カ所の国立公園のすべてを対象に、「世界水準のナショナルパーク化を実現すべく、民間活用による魅力向上事業を実施してください」と、閣僚たちに指示したのだ。日本を訪れる外国人観光客の地方滞在を後押しするのが目的だという。

リゾート開発が魅力開発につながるのか

「魅力向上事業」の内容だが、総理は高級リゾートホテルや大型複合施設の誘致も検討しているが、「外資企業のイメージが先行しかねない」ので、直接の言及は避けたという。

 いずれにせよ、リゾート開発が「魅力向上事業」の中身であると知って、絶望にも近い大きな幻滅を感じざるを得ない。

 日本はどこに行っても街並みが醜い。電線のほか、看板等の屋外広告物が景観の邪魔をし、ビルやマンションが眺望を妨げる。また、建造物は、高さもデザインも色彩もなんら統一されていないため、街並み全体がゴミ屋敷のように見えることもある。山の斜面も海岸も、必要以上にコンクリートで固められ、山や丘の上には無数の鉄塔が連なる。

 各地を訪れた際、戦前や戦後間もないころの、その土地の写真を見る機会があるが、現在では同じ場所とは思えないほど、激変していることがほとんどだ。戦後、日本の国土がいかに無計画に改造されてきたか、あらためて思い知らされて愕然とする。こうして醜悪化した景観を、訪日した多くの外国人に見られてしまうのが、日本人として恥ずかしい。

 一方、欧州ではこのような醜悪な景観に出会うことはまずない。たとえばイタリア。列車の車窓から眺める風景にしても、ほとんどの場所で「大河ドラマの撮影ができる」と思わされる。つまり多くの場所が、なんの細工もせずに時代劇のロケ地になりそうなのだが、それは偶然の産物ではない。徹底して守られた結果なのである。

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