ドラマ再生「ランキング」 「VIVANT」が驚異的な数字残すも…「TVer」がメイン収入にならない理由

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TVerと視聴率の関係性

 民放の無料配信サービス「TVer」が2015年に始まってから約9年が過ぎた。今年1月時点の認知率は78.4%。利用率は25.1%に達した(NTTドコモモバイル社会研究所調べ、対象は15~79歳の全国男女)。4人に1人が使う時代になった。しかし、まだ誤解されている部分、分かりにくい点がある。TVerについて考えたい。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

 まずTVerの再生回数を上位から順に並べたい。個人視聴率(4歳児以上の全体値)とコア視聴率(13~49歳に絞った個人視聴率)も付記する。それによって、再生回数と視聴率の関係性の一端が浮かび上がるはずだ。

 対象は再生回数の集計が済んだ春ドラマ(4~6月)とする。その作品が第1回から最終回までの間に記録した再生回数の最高値を抽出した。

(1)テレビ朝日「Destiny」(火曜午後9時)4月9日放送の第1回 再生回数300万6551回/個人4.4% コア2.1%

(2)フジテレビ系「アンメットある脳外科医の日記」(月曜午後10時)5月27日放送の第7回 同296万1048回/個人3.2% コア1.5%

(3)TBS「9ボーダー」(金曜午後10時)4月19日放送の第1回 同274万2406回/個人3.6% コア2.2%

(4)フジテレビ「ブルーモーメント」(水曜午後10時)4月24日放送の第1回 同269万9591回/個人4.8% コア2.9%

(5)テレビ朝日「Believe-君にかける橋-」(木曜午後9時)6月20日放送の最終回 同261万5867回/個人7.6% コア2.5%

 これによって、いくつかのことが分かる。まず、再生回数と視聴率が正比例するとは限らない。

 TBS「日曜劇場 アンチヒーロー」の再生回数の最高値は4月14日放送の第1回で記録した248万7411回で8位だった。上位ではない。一方で第1回の視聴率は個人7.0%、コア4.5%と極めて高かった。

 高視聴率のドラマほどTVerの再生回数は伸びにくいという1面がある。リアルタイムでドラマを観た人が、TVerでもう1度観ようとする例は少ないと見られているからだ。

 半面、例外もあるから難しい。昨年の夏ドラマ(同7~9月)が象徴的だった。1位から3位は次の通りである。

(1)TBS「日曜劇場 VIVANT」(日曜午後9時) 同8月13日放送の第5話 再生回数419万3726回/個人9.3% コア6.1%

(2)フジテレビ「真夏のシンデレラ」(月曜午後9時) 同7月10日放送の第1回 同313万9741回/個人3.2% コア3.2%

(3)日本テレビ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(土曜午後10時) 8月5日放送の第4回 同273万9099回/個人3.8 コア2.5%

「VIVANT」は再生回数も視聴率も驚異的。この作品はTVerで2度、3度と観た人も多かったからだろう。作品に並外れた力があると、こうなる。

「真夏のシンデレラ」はコア視聴率の高さと再生回数が一致した。今年の春ドラマを観ていただいたら分かる通り、コアの3%超えはかなり高い。

 この作品は一部の人に敬遠されたが、ターゲットのT層(男女13~19歳)とF1層(20~34歳)の支持は厚かった。リアルタイムで観られなかった若い世代がTVerで観たと見られる。

「最高の教師」の場合、視聴率は平凡の域だったものの、再生回数は高かった。土曜の夜ということもあり、用事があってリアルタイムでは観られなかった人が、TVerで観たのではないのか。

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