「堀米雄斗」2連覇の「スケボー」が勝っても負けても“悲壮感なし”で清々しい理由

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「やーばぁ! ハンパないっすよ、これ」

 最後の最後まで追い詰められながらも、“東京五輪の覇者”はパリでも奇跡を起こした。堀米雄斗選手(25)が最終滑走で繰り出した超高難度のトリック。テレビ中継の解説を務めたプロスケートボード選手・瀬尻稜氏は、それを目の当たりにしてこうコメントした。

「おおおー! やーばぁ! ハンパないっすよ、これ。やっぱ持ってんだなー、すげー。しかも、超完璧っすね」

 スポーツ紙記者によれば、

「正直、他の競技の解説では考えられない言葉遣いでしょうね。とはいえ、テレビ観戦していた視聴者のなかで、瀬尻さんの解説を不快に感じた方はまずいなかったと思います。というのも、選手が繰り出す独特な“技”に対する瀬尻さんの説明はとても丁寧で、“やばぁ”“マジで”“すげー”という表現も、ストリートカルチャー発祥のスケートボードという競技の雰囲気に合っていました。また、ダイナミックな大技はルールを知らなくても楽しめるし、派手に転倒しても笑顔で声援に応える選手の姿は観ていて清々しい。実際、若者だけでなく年配の方も含めてスケボー人気が高まっているのを感じます」

 たしかに、“清々しさ”を感じる場面は他にもあった。堀米選手の劇的勝利によって、僅差での“大逆転負け”を喫してしまったのが、2位のジャガー・イートン選手、3位のナイジャ・ヒューストン選手という2人のアメリカ勢。悔しい思いをしたのは間違いないだろうが、堀米の勝利が決まるや、2人は“日本人金メダリスト”を抱き寄せて祝福を惜しまなかった。

勝てなくてもスタンディングオベーション

「堀米選手が勝利したスケボーの“ストリート”では、45秒間に多くの技を繰り出す“ラン”と、純粋に大技を競う“ベストトリック”の合計点を争うのが大まかなルールです。選手のレベルが高い決勝では“ラン”で点数が伸びないとメダル獲得は困難。実際、“ラン”で思うように成績を残せなかった選手もいました。ただ、そんな彼らも“ベストトリック”に本気で挑み続け、そこで大技が成功すると観客はスタンディングオベーションで称賛し、ライバルたちも拍手で出迎えるわけです。これまで色々な競技の試合を観てきましたが、こうした会場の雰囲気は独特に映りましたね」

 連覇を期待されながら、道半ばで敗北した女子柔道の阿部詩選手の大号泣は記憶に新しい。もちろん、スケボー初の五輪王者となった堀米選手も、凄まじい重圧と戦ってきたことは事実だろう。とはいえ、スケボーという競技に、柔道のような悲壮感が漂わないのはなぜなのか。

「スケートボードが五輪の追加種目となったのは2021年開催の東京五輪から。つい先日、14歳の若さで金メダリストとなったスケボー女子の吉沢恋選手は、東京五輪で優勝した西矢椛選手(当時13歳)に刺激を受けて本格的に大会へ出場し始めたそうです。そんな吉沢選手ですら、テレビで観るまでスケートボードが五輪種目に入っていたことを知らなかったとインタビューに答えています。スケートボードには、幼少期から五輪のメダルを最終目標にして人生設計を組むような選手はまだほとんどいない。そこは他種目との大きな違いだと思います」

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