WBCチームドクターが指南する体幹トレーニング 「肋骨部が硬い人のチェック方法」「ケガした場合はこう歩け」

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「肋骨部がガチガチの人が増えている」

 もしその感覚が得られないなら、他に何らかの“事情”があると考えられる。

 米川医師が示唆するのは、肋骨の問題である。

「中高年の方で、肋骨部がガチガチに硬い人が増えているんです。肋骨の間には筋肉があって、胸椎や胸骨とあわせて胸郭という籠状の構造を形成しています。そこは必要に応じて広がるなど柔軟性を有していますが、胸郭が硬いと柔軟性は落ちてしまいます」

 原因の一つが、よくない姿勢で座っていること。

「コロナ禍の影響で外出が減り、会社員の方も在宅ワークの時間が増えました。よくない姿勢で漫然とダイニングのイスや居間のソファに座っていたり、在宅ワークの環境づくりが急ごしらえで椅子や机が体に合っていないまま長時間仕事をしているケースも。いずれも体には決してよくありません」(同)

胸郭の硬さをチェックする方法

 この胸郭の硬さをチェックする方法があるそうだ。

 まず床に四つん這いになり、右手を後頭部に添える。その状態から右肘を天井に向けて上げていき、その動きに合わせて顔も右上のほうにひねっていく。

「若い人だったら肘が90度近くまで簡単に上がり、普通に天井が見えるのですが、中高年の方は意外に難しい。70度、つまり天井が視野に入るぐらいまで上がれば及第点。もし天井が見えないようだと、かなり硬いなという印象です」(石井氏)

 それにしても胸郭が硬いと、どうして歩くことに影響するのだろう。

 石井氏によれば、人間は歩くときに腕を振りながら、上半身を“でんでん太鼓”よろしく右回り・左回りへ繰り返し運動させている。これによって推進力を生み、下半身とも連動して歩みを進めるエネルギーを生んでいるという。だが、胸郭が硬くて可動域が狭いと、そのような動きができずに下半身の推進力だけに頼りがちになり、歩くうちにふくらはぎが痛くなる。

 可動域は重要で、たとえばゴルフや野球のスイング動作をする人は、腰を過剰に動かして痛めることがあるので要注意なのだ。

「ゴルフクラブを振るとき、頸椎、胸椎、腰椎などからなる背骨を回転させます。胸椎は左右に40度ぐらい回る構造ですが、腰椎はせいぜい7度から9度。胸郭が硬い人がクラブをスイングすると、胸椎が動かない分を腰が補正しようとするんですね。するとスイングの勢いで腰椎が可動域を超えて回ってしまう。バットを振る際も同様で、成長期の子供では腰椎分離症(腰椎の疲労骨折)になることがあります。中高年の方ですと、腰椎や椎間板、椎間関節を痛める原因になり得ます」(同)

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