「天海祐希」「吉田羊」の例も…遅咲きブレーク40歳「松本若菜」が演じる“西園寺さん”から目が離せない

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若い世代が飛びつく

 シリアスなセリフも良く、心打たれる。里美は西園寺家で楽しい時間を過ごしたあと、泣きそうになりながらこう言った。

「おいしいとか、楽しいとか思うたび、ここにあの子がいてくれたらと思ってしまう」

 肉親を失った人なら里美の気持ちが分かるはず。大切な人が他界すると、時間を共有したかったと思う。

 16日放送の第2回は個人視聴率が3.9%だった。15日から21日までにプライム帯(午後7~同11時)で放送された14本のドラマのうち、4位である。コア視聴率(13~49歳に絞った個人視聴率)は2.6%で2位だった。

 F1層(20~34歳の女性)とT層(13~19歳の男女)の個人視聴率も2位。ちなみにコアとF1層、T層のトップはいずれも21日に放送されたTBS「日曜劇場 ブラックペアン シーズン2」(日曜午後9時)の第3回だった。

 このドラマを成功させた立役者が松本若菜であるのは言うまでもない。俳優デビューから17年でプライム帯の連ドラ初主演だが、伸びやかな演技を見せている。

 これまでは勿体ない使われ方も多かった。たとえば、フジ「やんごとなき一族」(2022年)では大金持ち一家の一員・深山美保子に扮し、顔芸がウケたが、俳優としてのキャリアアップには結びついていない。

 顔芸の流行時に制作者たちに取材したところ、顔芸と演技は別のものと考えられている。演技とは俳優が実在する人間のフリをすること。顔芸をする人間はいないからである。

 松本は演技の幅が広い。それはテレビ東京で主演した深夜ドラマ「復讐の未亡人」(2022年)を観ただけでも分かる。現在もNetflixなどで配信している。

 このドラマで松本は、悪知恵と肉体を使って自死した夫の敵討ちを図る鈴木美月に扮した。夫が勤務していた会社に潜り込んでおり、昼間は人当たりが良く、誰にでも好かれる女性。夜は妖艶になって男性を誘い、さらに残忍な女性に変貌した。1つの30分ドラマで3つの役柄をこなしたのと同じだった。

「西園寺さん――」の成功により、これからは主演級の仕事が相次ぐようになるのは間違いない。

 40歳だが、遅すぎということはない。

 天海祐希(56)が1995年の宝塚退団後、2本目の主演連ドラだったフジ「離婚弁護士」(2004年)をヒットさせ、主演級の地位を確立したのは36歳の時だった。意外なくらい時間がかかっている。

 吉田羊(年齢非公表)がWOWOWの「コールドケース~真実の扉~」(2016年)で連ドラ初主演したときには40歳を過ぎていた。30代までの吉田は2時間ドラマなどで小さな役も演じていた。

 40代がバリバリ働き、恋をする時代である。演技の幅が広い松本を必要とするドラマは数多いに違いない。

高堀冬彦(たかほりふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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