「天海祐希」「吉田羊」の例も…遅咲きブレーク40歳「松本若菜」が演じる“西園寺さん”から目が離せない

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家事はしないが、人情家

 楠見は遠慮したものの、不自由な生活を送る父娘を西園寺さんは見過ごせなかった。「ごめん、ここは譲れない」。さらに楠見が夜中に街のコインランドリーに通っていることを知ると、これにも黙っていられず、「うちのを使いな!」と促す。

 度重なる厚意に楠見が恐縮すると、それにも西園寺さんは我慢できず、「じゃあ、家族になろうよ!」(第2回)と提案する。家族なら気を遣わないからだ。かくして偽家族が出来上がった。

 第3回では楠見と瑠衣の母親・波多野里美(奥貫薫)との間に確執があることを西園寺さんは知る。親は早くに子供を病気で亡くしてしまうと、子供の配偶者を責めてしまいがちである。

 すると西園寺さんはやはり見て見ぬ振りが出来ず、2人の関係修復のために尽力する。里美が楠見とルカに会うため、西園寺家に出向いてくると、強引に足止め。食事をさせ、泊まらせる。

 里美と楠見が話す機会を設け、さらに2人とルカが過ごす時間を作るためだ。翌日も里美を帰らせず、無理矢理に庭先でのバーベキューに参加させた。

 本人は気付いていないようだが、西園寺さんはとことん情に厚い人なのである。人情に溢れたドラマなのだ。これが、このドラマの最大の魅力にほかならない。

 昭和世代の中には故・石立鉄男さんと杉田かおる(59)が叔父と姪という設定で共演した日本テレビの名作「パパと呼ばないで」(1972年)を思い出した人もいるのではないか。

 この名作では突然、幼い姪を1人で育てることになった叔父が右往左往。それを助けたのは間借り先の米屋の主人(故・大坂志郎さん)やその長女(松尾嘉代)たち。損得抜きで姪の面倒を見る。やがて家族になっていく。

 歌舞伎や浄瑠璃を例に挙げるまでもなく、日本人は人情話が好きだ。それでいて「西園寺さん――」のセリフは極めて現代的だから、古臭くない。日本語をあえて崩し、若い世代の日常会話に近づけている。

 西園寺さんが仕事への取り組み方を説明するときは「やりたくなって、あとはバババ」。ごく簡単な家事をやったあとの西園寺さんは大威張りで「はぁーでビール飲んで、うまー」。凡百のドラマのセリフとは異なる。これも観る側を惹き付けていると見る。

 セリフがユーモラスなところも面白い。西園寺さんの親友・陽毬は「奥歯に毛ガニが詰まったような言い方」と言った。聴いた途端、吹き出してしまった。西園寺さんの同僚・佐藤千沙子(濱田マリ)は「ごめん、時間ドブに捨てトークだったね」と口にした。やはり笑った。

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