岡田監督の「求心力低下」を懸念する声も…阪神がリーグ連覇を逃しても“チームの将来”が暗くならない理由

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岡田監督と選手との間の信頼関係に“不安の影”

 それに加えて、チームにとって“不安要素”となっているのが、岡田彰布監督と選手との信頼関係だという。昨年は、監督復帰早々に結果が出たこともあって、その手腕は球団内外から称賛されたが、ここへ来て不安の声も増えてきているという。球団関係者はこう話す。

「もともと岡田監督は口数が少なく、選手と積極的にコミュニケーションをとるタイプではありません。独特の言い回しもあって、『岡田監督が何を言っているかよく分からない』という声も聞きますね。昨年はチームが好調だったので、それでも上手く回っていました。ですが、今年は不振の選手が多く、そのことに対してもあまり監督から有効な指摘やアドバイスがないということで、不安に感じている選手もいるのではないでしょうか。また、それは選手だけではなくフロントや編成に対しても同様で、監督の意図が上手く伝わっていないこともあるようです。今は、何とか優勝争いに踏みとどまっているので良いのかもしれませんが、これ以上、上位に離されるようだと岡田監督への求心力が一気に低下する恐れがあります」

 チームが好調だった昨年とは違い、報道陣に対しても不機嫌な態度を見せることが多いという。岡田監督は今年が2年契約の最終年であり、このままズルズルと優勝争いから後退していけば、日本一を達成からわずか1年で退任という話が出てくる可能性もありそうだ。

 しかし、かつての阪神のようにこのまま暗黒期に突入するかというと、「それはまた別の話」という声も聞かれる。他球団の編成担当者は、現在の阪神について、こう話してくれた。

「確かに今は主力が軒並み不調ですが、それでも優勝争いに踏みとどまっているところに、逆に地力を感じますね。主力選手は20代が多く、若手では外野手の前川右京が成長しています。二軍を見ても投手、野手ともに来年以降が楽しみな選手が多い。チームの将来は決して暗くないと思いますね」

今後のカギは若手選手の成長にあり?

 前川は、今年で高卒3年目ながら、前半戦だけで55安打を放つなどレギュラーをつかみかけている。また、ファームを見ても、ともに2年目の外野手・井坪陽生と野口恭佑がレギュラーとして活躍しているほか、高卒ルーキーの内野手・山田脩也も既に多くの出場機会を得ている。今年の戦力にはならなくても、来年以降のブレイク候補が多いことは確かだ。それには「フロント陣の改革が大きかったのではないか」と前出の編成担当者は指摘する。

「以前の阪神は、とにかく目先、目先のことばかりしか考えず、中途半端な即戦力の選手が、二軍にも非常に多かったです。ところが、ここ数年は将来性のあるスケールの大きい選手が多く入ってくるようになった。2019年に1位から5位まで高校生を指名したあたりからですかね……大卒でも成長が見込める選手が多い印象です。新人の獲得は、現場の意見を重視しすぎず、フロントが主導しているようで、それが功を奏しているのではないでしょうか」

 2003年に星野仙一監督、2005年に岡田監督でリーグ優勝を達成した時は、とにかく実績がある選手をかき集めて結果を出した。だが、強さは一時的なもので、長く続くことはなかった。この時の反省が、現在の戦略に行かされているのではないだろうか。今年、連覇を逃したとしても、阪神の“未来”にとってはとるに足らないことなのかもしれない。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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