白熱する「アメリカ大統領選」に感じる“うらやましさ”…日本は結局、「民意」より「与党内の力関係」なのか

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小さすぎるスケール

・〇〇氏は党の重鎮・麻生太郎氏と会食をし、総裁選についての意見交換をした
・〇〇氏は重鎮OB・森喜朗氏からの支持を取り付けた
・××氏は20人の推薦人を集めるべく、動き始めた。××氏を支持する△△派の応援を取り付ける算段である
・◇◇氏は、引退した派閥の領袖・◆◆氏のもとを訪れ、総裁選への支援を依頼した

 いかがだろうか。アメリカの大統領選における一般大衆を巻き込んだ熱狂と比べて、あまりにもスケールが小さすぎないだろうか。日本の首相選びはまるで、300人規模の企業の、社長人事を巡る裏工作と、手下の者のお追従にしか見えないのだ。あくまでも、総裁選に出馬したい人物が大物に媚び、そして将来的に出世をしたい忠実な子分候補を判別する権謀をしているだけ。国民はその茶番劇を冷めた目で見守るのみ。

 さらに、これが立憲民主党の話になると、さらに「小物感」が出てくる。120人規模の企業で「いやぁ~、野田さんでしょう」「いや~、岡田さんでしょう」「ここは枝野さんで」「やはり泉さんの続投を」みたいなことで、次の代表候補を決めようとしている。

 アメリカの大統領選は、民主党と共和党、それぞれが候補者を出し、その中の一人を選ぶ。候補者が選ばれるまではバチバチとやり合うが、決まってしまえばそれまでの争いは「ノーサイド」。党が一体となって候補者の協力にまわる。このような姿勢を見ると、我が国の密室政治とその後の恩讐のやりとりの醜さにはほとほと呆れてしまう。総裁選後、勝った側は「アイツはあの時協力しなかったから」などと、ライバル候補の支援者を閣僚人事、党役員人事などから爪弾きにし、冷遇する。俗に言う、冷や飯を食わせるというやつだ。実に陰湿な日本の首相争いである。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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