トランプ氏が勝てば「1ドル200円超え」の可能性も… 日本経済が受けるダメージを専門家が分析
「リスクの方が大きい」
政府・日銀の為替介入など、まさしく焼け石に水でしかないのだ。続けて、
「米国の景気が加速し、需要が高まることで日本の対米輸出が増えるケースも考えられます。ですが、それよりはリスクの方が大きいと思われます」
そう指摘するのは、ニッセイ基礎研究所上席エコノミストの上野剛志氏である。
「10%の追加関税など保護主義的な政策によって、対米輸出はダメージを受け、それを回避するために日本国内の工場を米国へ移転させる動きが出てくる可能性もある。そうなれば国内生産力は押し下げられてしまいます」
金融政策に関しては、
「トランプ氏は不動産業の人だけあって“高金利嫌い”。そして製造業を重視する“ドル高嫌い”です。前回の任期中も、パウエルFRB議長に対し“政策金利が高すぎるから下げろ”と露骨に迫っていたくらいです」(同)
急激に景気が悪化してインフレが終息すれば…
とはいえ、先述のように「金利高・ドル高」という本人が望むのとは正反対の状況が生じる恐れが濃厚なのだが、
「これに米国経済が耐えられず、急激に景気が悪化してインフレが終息すれば、FRBも利下げしてドル安となる。そうした流れに行きつくシナリオも想定されます」(同)
ただし、
「現在のパウエル議長の任期は26年5月まで。その後任に、トランプ氏の意を受け、やたらと利下げするような人物が就くと厄介です。いったん金利は下がるかもしれませんが、ただでさえインフレ気味の状況が利下げで一気に加速し、それを抑えようと急激な利上げを余儀なくされる恐れもあります」(同)
そうした事態に、日本はいちいち振り回される羽目になりかねないのだ。
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