「大手メディアが信用されていないことが問題」 鹿児島県警不祥事に産経新聞元記者が指摘

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「1人だけ人事異動」が意味するもの

 ハンターの記事によれば、この事件はこういうことのようだ。

 2022年4月、ある警察署の駐在所に勤務する30歳代の男性巡査長が、パトロール中に立ち寄った先で20歳代の女性と出会った。月に1度ほど女性のところを訪れて世間話をしていたようだが、駐在所の巡回連絡簿から女性の個人情報を不正に入手し、2023年4月ごろから、2人は個人的にLINEのやり取りをする間柄になった。そのうち女性に「抱いていい?」などとメールしたり、食事に誘ったり、ホテルについて尋ねるメールを送ってくるようになったという。交際相手に女性が相談。県警の知るところとなり、捜査が開始された。ところが、2024年2月、突然捜査は打ち切られる。

 なぜか。女性の交際相手が事件化を望まない意向を示したからだ。ところが、面妖なことに女性の交際相手が何と加害警察官と同じ県警の警察官だったというのだ。

 本田前生活安全部長が、義憤を感じたのが分かる気がする。おそらくは監察が女性のところに出向いて「交際相手の将来に影響するかもしれない」などと一言、申し添えたのではないか。

 もし、そうだとすれば(おそらく真相もそれほど遠く外れてはいないと思うが)、女性が事件化を望む、などと言えるわけもないからだ。

 おかしなことに女性を撮影した容疑で逮捕されたT巡査部長は警備課から地域課に異動し、このストーカー警官も駐在所から署内勤務に異動させている。ハンターに情報を漏洩したとされるF巡査長も異動となっている。

 人事異動のシーズンでもないのに、1人だけ人事異動が行われたときは、病気やケガが理由でなければ、不祥事によって引き起こされた可能性を疑うべきだ。

メディアの側にも問題がある

 いずれにせよ、「ハンター」が鹿児島県警の不適切事案をこれでもか、と報じていたくらいだから、今の鹿児島県警は2000年前後の神奈川県警に匹敵するような酷い状態に陥っている可能性は極めて高い。そこに指揮能力に疑問符がつき、部下からの人望がない野川本部長がつくづく嫌になって、自らの将来に傷がつく、と本田前生活安全部長が考えた 可能性はやはり否定できないだろうと考える。

 6月19日、日本ペンクラブと新聞労連が鹿児島県警の「ハンター」への家宅捜索に関して、抗議声明を出した。自分たちの不正を暴いたメディアに対して家宅捜索を行うだけではなく、そこで押収した資料をもとに告発者を逮捕するなどという行為を警察が簡単に行うことは看過しがたいのは当然だろう。まるで中国やロシアの警察のようだ。

 ただ、この事件についてはメディアの側にも問題があるように思う。

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