中日の新星「松木平優太」初登板に至る苦難の道のり 離別、死別、コロナ禍を乗り越えて

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 中日ドラゴンズに珍しい名字の投手がいる。

 松木平(まつきひら)優太(21)――育成契約ながらウエスタンリーグで防御率1点台の彼は、7月8日に支配下登録されると、10日のDeNA戦で先発として初の1軍マウンドに立ち、7回3失点と頑張った。が、打線の援護なく、0-3でチームは敗れ、敗戦投手となった。

 しかし、その経歴を聞けば誰もが彼を応援したくなるのではないだろうか。

過酷すぎる境遇

 インドネシア人の父と日本人の母の間に生まれるも、2歳の時に両親が離婚してしまい、父親の記憶はほとんどない。肝臓がんを患った母親とも、小学2年生で死別し、一つ上の姉と共に祖父母に育てられる。野球好きの祖父の手ほどきを受けながら、大阪の私立精華高校に進学するも、2年時に祖父が川で転落死。翌年、祖母も体調を崩し、ほどなく施設に入所してしまった。

 過酷な境遇にコロナが追い打ちをかける。エースに成長した高3は春夏とも甲子園が中止となった。

 だが、人生に曙光が差し込んだのもこの時だった。練習試合で好投し、相手校の履正社を視察していたスカウトの目に留まったのだ。NPB主催のプロ志望高校生合同練習会でも評価を高め、ドラフトでは育成指名ながらも念願のプロ入りを果たした。余談だが、この年の中日1位指名は侍戦士の高橋宏斗投手である。

「練習会には昨年度パ新人王の山下舜平大投手も参加していた。この年代は、甲子園に行けず気の毒でしたが、消耗が少なかったのが奏功したのか、好投手が多い気がします」

 と語るスポーツ紙記者によると、

「中日には、母子家庭で育った選手が少なくありません。古くは星野仙一。立浪和義監督もしかり。エース格の大野雄大や柳裕也もそうです。母子家庭の子供は『自分がしっかり稼がないと』という責任感が強いので、ドラフトではプラスに評価しているそうです」

 次の登板が楽しみだ。

週刊新潮 2024年7月25日号掲載

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