巨人の正捕手は岸田行倫で決まりか? FAでソフトバンク・甲斐拓也を獲得する可能性は…広澤克実氏の分析

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まだまだ“どんぐりの背比べ”

 捕手としてスタメン入りした回数を見てみよう。7月25日現在、岸田が断トツの1位で45試合。2位は小林で26試合。そして大城は18試合に留まっている。岸田が実質的な正捕手であり、控え捕手が小林、そして大城の野手転向が現実味を帯びてきた――ようにも見える。

 だが、巨人OBで野球評論家の広澤克実氏は「まだまだ、巨人の正捕手は決まっていないと見るべきでしょう」と言う。

「捕手の能力は守備力、打撃力、リード、そして盗塁阻止率という4つの評価ポイントで測ります。阿部監督が岸田くんを積極的に起用しているのは、打撃が好調ということが大きいでしょう。また大城くんはリードに、小林くんは打撃に難があります。一方の岸田くんは4つの評価ポイントにおいて最もマイナスが少ないとは言えます」

 積極的なものではなく、あくまでも消極的な評価に基づき、阿部監督は岸田を起用しているようだ。つまり巨人で3人の捕手が“どんぐりの背比べ”を続けている状況は変わっていない。岸田が“頭一つ抜けた”わけではないという。

「ヤクルトで私のチームメイトだった古田敦也や、中日で活躍した谷繁元信くんといった球史に残る名捕手は、たとえ監督が変わっても正捕手の座を守るだけの安定感と実績を誇っていました。阿部監督が岸田くんに強い期待を寄せているのは明らかですが、もし阿部監督が交代するようなことになれば、小林くんや大城くんが抜擢されても不思議ではありません。3人には依然として長所と短所があり、1人を正捕手として選ぶのは難しいという状態は変わっていないのです」(同・広澤氏)

野村克也の名言

 正捕手が4つの評価ポイントを高い水準でクリアしているのは当然だが、更に名捕手と普通の正捕手を分けるポイントは別にあるという。

「自身も捕手だった野村克也さんは『名投手が先発するのなら、捕手は壁でいい。投手に気持ち良く投げてもらうのが仕事』とした上で、『三流のピッチャーをリードし、勝利に導いてこそ名捕手』と指摘していました。野村さんの言う名捕手になるためには、まだまだ3人は切磋琢磨する必要があるのは言うまでもありません。気になるのは巨人に限らず令和のプロ野球ではチームメイトの仲が良すぎる印象があることです。どこまでチーム内で厳しい競争を実現できているのか、少し疑問に感じています」(同・広澤氏)

 今年のFAはソフトバンク・甲斐拓也(31)、阪神・坂本誠志郎(30)、そして巨人の大城と、“捕手豊作”で早くも注目を集めている。巨人の3人で正捕手が決まらないのなら、FAで獲得する方法もある。

「私は巨人がFAで捕手を獲得するのは、何よりも巨人ファンに失礼だと思っています。阿部監督は巨人史上初となる捕手出身の監督です。ファンは阿部監督が自身の後継者を育ててくれることを期待しています。野村さんは『カネを残すのは三流、仕事を残すのは二流、人を残して一流』と口にしていました。阿部監督はFAで外部の捕手を獲得するのではなく、ぜひとも生え抜きの正捕手を育て上げ、一流の監督になってほしいと思います」(同・広澤氏)

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