「清宮幸太郎」はトレード候補になるが、「中村奨成」は厳しい…甲子園を沸かせた“ドラ1”スラッガーが苦境に

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『甲子園のスター』がプロで活躍できるとは限らない

 清宮と同学年で、ドラフト1位で入団した安田尚憲(履正社→ロッテ)と中村奨成(広陵→広島)も苦しんでいる。

安田は、プロ入り3年目の2020年から昨年まで4年連続で100試合以上に出場した。しかし、キャリアハイは2022年の9本塁打で、入団当初に期待されていたホームランバッターには成長していない。

今年は、開幕直後に腰を痛めて登録抹消となると、なかなか調子が上がらず、前半戦を終えて、本塁打はゼロだ。清宮と比べると実績があるとはいえ、同じ左の強打者タイプで、ドラフト1位ルーキーの上田希由翔(明治大)が加入したことで、チーム内での安田の立場が危なくなっている。

中村は、安田以上に立場は厳しい。4年目の2021年にようやく一軍で初ホームランを放つも、その後は全く目立つ結果を残していない。今年から捕手から外野手に登録が変更され、背番号は「22」から「96」に変わった。前半戦を終えて、出場は8試合だけ。打率は.083、本塁打はゼロ。ヒットは1本しかない。

他球団のスカウトは、夏の甲子園で大活躍した中村に対して、プロで通用するか疑問視していたという。

「(捕手として)肩の強さは素晴らしいものがありましたが、バッティングは、(スカウト陣に)そこまで高く評価されていたわけではありません。それが、夏の甲子園で、ホームランを連発(大会記録の6本塁打)したことで、かなり評価が変わりましたよね。甲子園では、たまに“確変(確率変動)”状態になるような選手がいます。いきなり『甲子園のスター』になったことで、本人が勘違いしてしまったところがあるかもしれません」

後半戦での奮起に期待

 一方、前出のスポーツ紙記者からは、こんな見方も出ている。

「(中村は)たびたび女性問題がメディアに報じられており、球団からも真摯に野球に取り組むように指摘されています。最近は、どの球団もコンプライアンスを守る意識が強くなっており、トラブルを起こす可能性がある選手は避けたい。そうなると、仮にトレード要員として提示しても、すんなりと受け入れる球団は少ないでしょうね」(前出のスポーツ紙記者)
 
 そうなると、広島で結果を残すしかないが、中村にとって“追い風”なのはチームが得点力不足に悩んでいるという点だ。特に、右打者は新外国人選手が機能しておらず、手薄な状況だけに、何とかチャンスを生かしたい。

 清宮、安田、そして中村。“低空飛行”のままで、プロ生活を終えるような野球人生にしてほしくない。後半戦での奮起を期待したいところだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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