阪神・才木浩人、日本ハム・田宮裕真…人気若手選手の“高校最後の夏”を振り返る!

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県大会決勝で涙をのんだ田宮裕真

 一方、成田の主将・捕手を務め、打っても3番とチームの大黒柱だった田宮は、高校最後の夏は、甲子園まであと1歩のところで涙をのんでいる。

 母方の祖父、母方の2人の伯父がいずれも同校の捕手だったという血筋もあり、子供のころから肩が強かった田宮も、小3のときから捕手ひと筋。高校でも1年秋から正捕手になり、高2秋の大会後、県選抜チームの主将も務めた。

 2018年の夏の東千葉大会、成田はノーシードながら、木更津総合、拓大紅陵の2強に次ぐ有力候補だった。

 初戦で多古に苦戦の末、8対7でサヨナラ勝ちした成田は、3回戦は田宮が3打数3安打4打点と打ちまくり、シード校の千葉黎明を5回コールドの13対3で粉砕。4回戦の銚子商戦でも、田宮は2対1の5回に満塁の走者を一掃する右中間三塁打、準々決勝の安房戦では、1対2の3回に値千金の逆転2ランと随所で勝負強さを見せた。

 さらに準決勝の志学館戦では、安打の走者をすかさず一塁送球で刺し、守備でもアピール。準決勝までの5試合で16打数9安打12打点2本塁打の豪打と併せて、同校の8年ぶり決勝進出に大きく貢献した。

 そして、「全員で楽しもう」と臨んだ決勝の木更津総合戦、初回に1点を先制したものの、2回に逆転されると、5回まで毎回失点を記録し、1対9と突き放された。

 だが、8回、田宮は執念の中前安打を放ち、後続のタイムリーで2点目のホームを踏む。9回2死からも前打者に続いて安打で出塁し、最後は2死満塁までチャンスを広げたが、2対10で敗退。「甲子園に行きたかったけど、木更津総合のほうが強かった」と目を潤ませながらも「やれるだけやった結果。悔いはない」と言い切った。

プロのスカウトを唸らせた長岡秀樹の好守備

 オールスター出場3度目で初めてファン投票選出をはたしたヤクルト・長岡秀樹も、八千代松陰時代は、2019年夏に千葉大会決勝まで勝ち進んでいる。

 広角打法と50メートル6秒1の俊足で1番ショートを務めた長岡は、千葉大会4回戦、専大松戸戦で、初回に最速148キロの好投手・横山陸人(現・ロッテ)の速球を完璧にとらえ、ZOZOマリンスタジアムの右中間席に先頭打者本塁打を放った。

 Aシードの強豪を下して勢いに乗ったチームは、5回戦以降も八千代東、千葉明徳、市原中央を連破、21年ぶりの甲子園に王手をかけたが、決勝でセンバツ準Vの習志野に1対8で敗れ、最後の夏が終わった。

 この試合で長岡は、プロのスカウトを唸らせる好守備を見せている。3回2死一塁で三遊間を抜けるかというゴロに飛びつき、強いリストを生かして二封アウト。5回2死二塁、中越えの長打を放った打者走者を好判断で三塁アウトに取るなど、「シュアで一発を秘めた打撃と球際に強い堅実な守備」(ヤクルト・丸山泰嗣スカウト)が次世代のレギュラー候補と評価され、同年のドラフトでヤクルトの5位指名を受けた。
 
 プロ4年目でオールスター初出場の山崎伊織(巨人)も、明石商時代は控え投手で、背番号10でベンチ入りした2016年のセンバツは出番なし。3年春の県大会で自己最速148キロをマークも、最後の夏は右肘を痛めたため、主に外野を守り、俊足を生かして1番を打った。

 チームは兵庫大会決勝で市尼崎に2対3と逆転負けし、惜しくも春夏連続甲子園を逃したが、山崎は9回表に大会初登板、1安打無失点に抑え、「9回裏の攻撃につなぐ投球を」の目標を叶えている。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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