「炎上しなけりゃ粗品じゃない」 27時間テレビで「ダウンタウンの次のゲームチェンジャー」ぶりを見せつけた霜降り明星・粗品

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 フジテレビの「27時間テレビ」で総合司会を務めた霜降り明星の粗品。ライターの冨士海ネコ氏は、この抜てきにフジテレビの覚悟を見たという。

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 フジテレビの「27時間テレビ」が日テレの「24時間テレビ」に対するアンチテーゼであることは有名だが、今年はすでに勝負あったな、と感じた。24時間テレビが「愛は地球を救うのか?」に対し、27時間テレビは「誰がフジを殺すのか?」を見せつけた構成だったのではないだろうか。愛が地球を救うだなんて、まだそんな大上段からモノを言ってんの。そう日テレをあざ笑う、血まみれのフジテレビの姿が見えた。

 テレビ局が嫌われ者となって久しい。「楽しくなければテレビじゃない」の前には、「俺たちフジテレビが」と付くと思っていた視聴者も多いだろう。そこには、「恵まれない人たちに手を差し伸べる」24時間テレビと同じ高慢さがにじみ出る。だからいま各局に必要なのは、分かりやすく自局をぶった斬ってくれる人だ。そしてフジテレビが選んだ介錯人が、霜降り明星の粗品さんだったのではないか。

 トップの陽キャが集うイメージのあるフジの凋落は、人気タレントの衰退と重なっている。とんねるず、SMAP、ダウンタウン。それだけ時代を作るタレントとタッグを組むのがうまいことの証しでもあり、フジの強さは自分たちと同じ「強者」を見つけ出す嗅覚にあると言っても過言ではない。歓声を上げる観客と華のある女子アナを飾りに、プロデューサーや社長らとタメ語で会話する様子は、排他的かつ人気者の特権として映る。そうやって視聴者の憧れや嫉妬を一身に集めて、業界の王者となり得ていた時代もあった。

 27時間テレビにあったのは、フジのその強者の歴史の反転である。開始早々から港浩一社長・大多亮関テレ社長らを「カイジの偉い人たち席」と先制パンチ。とんねるずの盟友だろうが、ドラマ黄金期の立役者だろうが、「きょうは何の影響力もないおじさんたち」にしてみせた。ダメ押しで大谷翔平選手への過熱取材を茶化す粗品さんは、フジという天狗の鼻を折りにきた刺客として、最初の務めを果たしたといえる。

 社員と大御所の悪ノリに見えがちな内輪意識と傲慢さを断ち切る。それが今回の27時間テレビで、粗品さんに託されたもう一つの使命だったのではないか。番組内での粗品さんの言動はことごとくネット上でお祭り状態になったが、石丸伸二さんよりメディアのおちょくり方を分かっている人ならではだと感心したほどだ。むしろ「炎上しなけりゃ粗品じゃない」と、フジも手応えを感じていたことだろう。

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