反捕鯨団体「シー・シェパード」の“創設者”が逮捕「信頼を勝ち得るため、犠牲者のふりをせよ」過激すぎる“エコテロリズム指南本”の中身とは
世界中でエコテロを繰り返す
カナダで生まれたワトソン容疑者は国際環境保護団体「グリーンピース」の元メンバーで、グリーンピースのやり方が手ぬるいとして脱退した過去がある。1977年にシー・シェパードを設立。ワトソン容疑者は海洋保護や動物愛護に意欲のある若者たちをそそのかしてメンバーや活動資金を募り、世界中でエコテロ行為を起こしてきた。
シー・シェパードは「武装環境保護団体」とも言われた。1979年にはポルトガル沖で捕鯨船に体当たりして航行不能に。1986年には伝統捕鯨が行われているデンマーク領フェロー諸島で抗議船を用いて妨害活動を行い、警備のために近づいてきた海保当局のゴムボートにガソリンをまき、照明弾を発射して燃やそうとした。
1986年11月にはワトソン容疑者の命令を受けて2人のSS活動家が捕鯨国アイスランドに入国。2人は鯨肉加工施設の内部を破壊し、捕鯨船を沈没させたが拘束には至らず、国外へ逃亡した。当時のアイスランド首相は声明を出し、「この破壊活動はテロリストの仕業だ」と訴えた。
米FBIは国内でエコテロが猛威を振るっていた2002年、これを抑止しようと捜査官が米議会委員会で証言し、シー・シェパードが商業的漁業を襲撃するようになってから「この地球上に『エコテロリズム』活動が出現した」と指摘した。
「犠牲者のふりをしろ」ワトソンの奥義
こうした数々のエコテロ行為に及んでも違法行為をしたことはない」とうそぶくワトソン容疑者の思考回路をよく表している言葉がある。
1993年、ポール・ワトソンが42歳の時に書いた、「地球防衛戦士」になるための指南本『EARTHFORCE!』には36か条の教えとしてこんなメッセージが記されている。いくつかを紹介したい。
「相手の目標達成に向け、得点を稼ぐために、常に相手のトラブルにつけこめ」(第5条)
「自分の意図や動向については偽情報を流せ」(第6条)
「相手の目の前で作り話をでっちあげ、それが真実であると相手が信じるような手がかりを残しなさい」(第7条)
「戦略家は偉大な目標を成し遂げるために、犠牲者を作ることも覚悟しなければならない」(第11条)
「利用できる有益な材料やソースを探し、その情報を活用せよ」(第12条)
「実在する神話をつまんで、自分自身の伝説を創造せよ。派手派手しいドラマを演出し、相手をだましなさい」(第29条)
「人々の信頼を勝ち得るために、犠牲者のふりをしなさい」(第34条)
この奥義にこそ、ワトソン容疑者の行動の真骨頂が映し出されていると言えまいか?
また、ワトソン容疑者の哲学には、「グリーン・アナーキズム」とも称される原理主義思想が根付いている。2002年、全米規模の動物愛護関連の催しにゲストとして呼ばれたワトソン容疑者は壇上に立ち、こんなことを言った。
「人の財産を破壊することは暴力ではない」
「勝ち続ける以上、テロリストであることは何の間違いでもない。あなた自身が歴史を書き換えたらいい」
2年後の同じ大会では、米FBIにエコテロ団体としてマークされている「動物解放戦線」をこう擁護してみせた。
「私は動物を救うために、実験室に侵入する者たちを全面的に支援している。命を救うためには何でもしなければならないとする者たちも全面的に支援する。なぜなら正義は法律の上に立つのだから」
「我々のメッセージを伝えるために、漁師たちを死ぬほど怯えさせることを続けようではないか」
ワトソン容疑者は2003年に当時の妻や右腕の活動家を和歌山県太地町に派遣して以来、日本の捕鯨やイルカ漁を妨害することを活動の柱とした。日本の「漁師を死ぬほど怯えさせる」ことができれば、自らを「救世主」「海の英雄」とアピールでき、人も金も集まるうま味を見つけたからだ。
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