反捕鯨団体「シー・シェパード」の“創設者”が逮捕「信頼を勝ち得るため、犠牲者のふりをせよ」過激すぎる“エコテロリズム指南本”の中身とは

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 反捕鯨の73歳のカリスマが、短い夏を迎える北緯64度の港町に拘束され続けている。舞台はデンマーク領グリーンランド。シー・シェパード(SS)を創設し、今は別の反捕鯨団体を率いるポール・ワトソン容疑者が日本の捕鯨船団を妨害した容疑でデンマーク当局に捕まり、日本への身柄移送手続きが進んでいる。

「海の英雄」「真の環境保護活動家」を救え――などと反捕鯨国の欧米諸国やオーストラリアでは日本バッシングが沸き上がっているが、ワトソン容疑者は環境保護や動物愛護をうたって、目的達成のために過激で非合法な行為に走る「エコテロリズム」を世界に広めた張本人だ。今夏も日本の捕鯨への攻撃態勢を整えていた。【佐々木正明/ジャーナリスト・大和大学社会学部教授】

フランスでは50万人のワトソン解放署名集まる

「#FreePaulWatson」といったハッシュタグに象徴されるワトソン解放運動が最も沸き上がっているのは、ワトソン容疑者がかつて約1年の逃亡生活を続けたフランスだろう。ブリジット・バルドーら著名俳優らが公の場に登場して、「恥を知れ、日本」などの批判を展開。ネット上では「日本への引き渡しは死刑宣告」などとして、マクロン政権に対し、ワトソン容疑者の身柄拘束を決断したデンマーク政府に釈放するよう呼びかける嘆願運動が開始され、すでに50万人以上の署名が集まっている。

 その結果、世論の高まりを受けたマクロン政権も動き出し、エリゼ宮は「大統領が状況を注視している。フランスはワトソン(容疑者)が日本に引き渡されないよう、デンマーク当局に働き掛ける」と声明を出した。

 ワトソン容疑者が世界中にその名を知られるようになったのは、2008年にアメリカの有料チャンネル・アニマルプラネットで始まったシリーズ番組「Whale Wars(クジラ戦争)」が各国で配信されるようになったからだ。撮影班をシー・シェパードの抗議船に同乗させ、エコテロ行為の様子を実況するリアリティー番組で、ワトソン容疑者はカメラの前で何度も迫真の演技を見せた。

 シーズン1では、ワトソン容疑者が捕鯨船を警護するために同乗した海上保安官から狙撃され、胸のバッジに弾がたまたま当たって九死に一生を得たとするフェイクシーンまで映し出されている。厳格な銃使用規制を敷く海上保安官が船から発砲するなどありえないとして日本では一笑に付されるかもしれないが、日本の捕鯨に批判的な人たちにはこのシーンは一定の真実として受け止められた。番組は反捕鯨国で大きな反響があり、実際、アニマルプラネット史上歴代2位(当時)の視聴率を稼ぎ出した。

 しかし、「Whale Wars」は南極海で抗議船ごと捕鯨船に体当たりしたり、捕鯨船にビンに入った酪酸弾を投げつけたりするなどの危険なエコテロ行為を「正義」と映し出す問題点の多い番組だった。団体の存在感を強め、寄付金をより多く集めようとするワトソン容疑者の策略に乗っかってエコテロリズムを助長し、荒稼ぎしたアニマルプラネットの道義的責任は大きい。

 実際、「Whale Wars」を見て、ワトソン容疑者のように「海の英雄」になろうと来日し、イルカ漁が行われている和歌山県太地町で反社会的行為をする外国人活動家が増えたことは事実だ。太地町ではモニュメントが破壊されたり、網が切られたりしてもする事件が起きている。

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