【全英オープン】シャウフェレが最終日に圧巻逆転勝利 入れ替わりが激しかった上位陣、それぞれの敗因

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メジャー初優勝のチャンスだったホーシェル

 ホーシェルはPGAツアー通算8勝で、2014年には年間王者にも輝いた実力者だが、メジャー優勝は一度も挙げたことがなく、メジャー大会でのトップ10入りも、これまでに2度しかなかった。そんなホーシェルにとって、今大会は初めて訪れたメジャー優勝の絶好のチャンスだった。

 ベテラン選手であるホーシェルは、メンタル面のコントロールこそが勝敗を決することを十分に意識しており、3日目の夜には、こんなことを言っていた。

「今夜は大好きなダーツの試合をテレビで見てリラックスする。そのあとは、明日の夕暮れに拍手喝采の中でクラレットジャグを抱いてトゥルーンの18番を練り歩く自分の姿を思い描きながら寝るつもりだ」

 それは、いいイメージを具体的に思い描くビジュアライゼーションのつもりだったのだろう。しかし、鮮明に思い描きすぎて勝利への渇望が過度の欲望になってしまったのかもしれない。

 最終日のホーシェルは8番のボギーが発端となって勢いを失い、優勝戦線から離れていった。

「夢が叶った。ドリームカムトゥルーだ」

 ベテラン勢の夢がことごとく破れていった一方で、30歳の若手であるシャウフェレはメジャー2勝目を達成し、「夢が叶った。ドリームカムトゥルーだ」と喜びを口にした。

 とはいえ、若いシャウフェレにとっても、「ノーメジャー」と揶揄されてきたプロデビューから今日までの9年間の歳月は、何度も夢破れ、長く苦しい日々だったに違いない。

「メジャー初優勝は永遠に挙げられないのではないかと思えるほど長い道程だった。でも1つ目を勝ったら、2つ目はまったく別モノだった」

 メジャー2勝目は意外なぐらい、早くやってきた。そんな意外な勝ち方は、天候も風も運不運も目まぐるしく変化するスコットランドの全英オープンらしい面白さだったのではないだろうか。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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