危険なインプラント詐欺が…「健康な歯まで抜いて治療せず」 “負債総額19億円”の悪辣な手口に警察も捜査を開始
「アイツの歯を全部抜いてやりたい」
高額なインプラント治療費を前金で支払わせ、健康な歯まで抜くも治療を完了させず、怒れる患者たちから逃げ回る。さらには当の歯科医が6月末に破産手続きを開始。負債総額は約19億円にも上るという。「被害者」たちが詐欺だと追及の声を上げる中、ついに警察が動き出した。
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「アイツの歯を全部抜いてやりたい」
憤まんやるかたない様子でこう語るのは、千葉県で建設会社を営む男性(50代)だ。“アイツ”とは、千葉市内に歯科医院を構える「高橋デンタルオフィス(以下、TDO)」の院長、高橋仁一氏(57)のことを指す。
この男性はもともと歯周病が進行して上の歯が3本抜け落ち、インプラント治療を検討していた。知人の紹介を受け、TDOの門をくぐったのは22年6月のこと。
「(歯が抜け落ちた)3カ所を治せばいいかな」
そう思っていた男性に対して、初診時に高橋氏はこう言い放った。
「どうせやるなら、全部治さなきゃしょうがない。上を治したら、すぐ下の歯もダメになるから」
「1400万円全額返すキャンペーンなんです」
男性が次に赴くと、「インプラント治療計画書兼見積書」なる書類が準備されており、全ての歯を抜いて合計16本の人工歯根を埋め込み、オールセラミックスのかぶせ物10個を付ける内容の見積もりが書かれていた。合計5回の手術を要する、総額700万円の壮大な治療計画だった。
「予想以上に高額なので私が悩んでいると、“来月になったら800万円になりますよ”と言われました。聞くと、材料費が上がっているのだとか。100万円も上がる前にと、その場で契約書にサインし、自分の会社から借りる形でお金を工面して、6月中に700万円を支払いました」(同)
しかしながら、実際に手術が行われたのは一度きり。しかも、その手術の少し前に男性は不可解な話を持ちかけられている。
「学会で発表する資料用に、症例を使わせてもらいたい。もう700万円を追加で出してくれたら、治療完了時に1400万円全額返すキャンペーンなんです」
「食べ物がロクにかめず、ほとんど飲みこむしかない状態」
若干心が揺らぐも、すでに男性の手元に資金は残っていなかった。話を詳しく聞く前に断ったのだが、高橋氏は「500万円ならどうですか?」と、しつこく食い下がったという。
その後の手術で、4本の人工歯根を埋め込み、仮歯をかぶせるところまで終了。治療を順次進める予定だったが、男性のカルテを見ると、まともな治療は施されていないことが読み取れる。昨年夏以降は連絡もまともに取れなくなったそうで、心配になった男性がTDOを訪ねるも、高橋氏は、
「私の口からは何とも言えません」
そう繰り返すばかりで、年が明けると閉院状態になってしまったというのだ。
「お金も戻ってきませんし、治療も中途半端。入れられた仮歯は全然サイズがあっておらず、かみ合わせが悪いのか喋りにくい。食べ物がロクにかめず、ほとんど飲みこむしかない状態でしたので、食事の量もめっきり減りました」(男性)
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