そうそうたる有名人が「宮田笙子は五輪に出場すべき」とXに投稿してもネット世論は完全無視 謎を解くカギはビートきよしの投稿にあった

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「ルールを破ったほうが悪い」

「宮田選手を巡るネット世論は、報道からも大きな影響を与えています。彼女の辞退が報じられると、当然ながら多くの人が衝撃を受けました。理由や背景を知りたいという声は強く、最初に取り上げられたのはストレスの問題でした。次に内部通報ということが明らかになり、ネット上では『チクったのは誰だ? その動機は?』という論調に傾きました。そして最後に『「日本体操協会行動規範」には禁煙と禁酒が明記されており、たとえ20歳以上の選手であっても、代表活動中の喫煙と飲酒は禁じられている』と報じられたことが決定的でした。これで『ルールに違反したのなら仕方ない』というネット世論が一気に大勢を占めるようになったのです」(同・井上氏)

 本来であればネット上に「宮田選手がかわいそう」、「ちょっと厳しすぎるのでは?」という意見が投稿されても不思議ではないという。

「ところが宮田選手の問題では、同情論を投稿しても『とは言っても、ルールはルールだからね』と簡単に論破されてしまいます。議論で負けることが明らかになっているのですから、同情的な意見を持つ普通のネットユーザーは投稿を控えます。著名人の皆さんが義憤に駆られて『寛大な処置を求める』と投稿しても、『ルールを破った宮田選手が悪い』という反論が殺到することになります」(同・井上氏)

正義の実現

 この問題を考える上で重要なのは、ビートきよしの投稿だ。彼は「政治家はもっと悪いことをしているのだから、宮田選手は許してやれ」と主張した。だが、これはネットユーザーにとっては「最も分かっていない投稿」だという。

「自民党の裏金事件は、いわゆる“トカゲの尻尾切り”で終わろうとしているように見えます。また宮田選手の辞退を知り、飲酒運転の問題を思いだした人も多かったのではないでしょうか。非常に悪質な飲酒運転で死亡者が出た事故でも、危険運転致死傷罪が適応されず、業務上過失致死で判決が下され、大変な批判が噴出したこともありました。ネット世論は『政治家のほうが悪いから微罪の宮田選手を許そう』ではなく、『政治や飲酒運転など、馴れ合いだらけで全てをうやむやにする日本社会で、宮田選手の件だけは正義が実現した』と歓迎しているのです。ルールを破った人が正しく裁かれたと感じ、憂さを晴らしている状態だと言えるかもしれません」(同・井上氏)

デイリー新潮編集部

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